「猫」の意味を知らない人はいない。炬燵でもどこででも主に丸くなってるやつらだ。
『新明解』第七版では次のように定義されている。
家に飼う(愛玩用)小動物。形はトラに似て、敏捷。暖かい所を好み、ネズミをよくとるとされる。
『岩波国語辞典』第七版・新版では「ねずみを取らせるなどのために」と、目的を強く表現している。猫の定義だけでも読み比べれば面白い。
ただ、そんな話はどうでもよく。「芸者」を「ネコ」と表現することについてだ。ぼくはこれをながらく、恥ずかしく、いやらしく、勘違いしていたようだ。
『新明解』第七版を引いてみよう。
三味線・芸者の俗称。〔三味線はネコの皮を張るので言う〕
多くの人が知る通りのことが書いてある。ただ、問題は書いてあることじゃない。書いていないことの方。
ネコとは「三味線」あるいは「芸者」の俗称だと書いてある。そして「三味線」をネコと呼ぶ理由は書いてある。しかし「芸者」についての理由は書いていない。
書いていないのには理由があると思うじゃないか。
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ぼくはこの「理由」を「下品だからだ」と考えていた。すなわち「ネコも芸者も布団の中で暖かい」とかなんとか。そんな理由だと思っていたのだ(嗚呼、恥ずかしい)。
しかし他の辞書を当たれば別の理由が書いてある。とてもシンプルだ。『大辞泉』第二版から該当部分を引いておこう。
《三味線を弾くところから》芸妓のこと。
なるほど。わかりやすく、一般的で、ストレートな理由だ。他の辞書にもだいたい同じような説明がある。ぼくの「下品だから」という理由付けはおそらく妄想であり、そしてそのような妄想を抱いたぼくこそが「下品」なのだった。
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[追記]おそらくぼくの思い込みは「炬燵芸者」という言葉との混同なのだろうと思った。ただ、手持ちの辞書に「炬燵芸者」は見つからず、Googleってみても簡単には見つからないようだ。