ぼくはリズムなしでそのまま覚えた中国歴代王朝。
その「殷」を使った「殷賑」という熟語があるのを知りませんでした。出会ったのは本日(2013年5月13日)の日経新聞読書欄。
15世紀から16世紀前半までのヴェネツィア共和国は、東方交易で膨大な富を蓄積し、「アドリア海の女王」と謳(うた)われ、ヨーロッパの三大メガポリスの一つとして殷賑(いんしん)を極めたのだった。
紹介されている本は『そのとき、本が生まれた』。紹介者は法政大学名誉教授の川成洋。
- 作者: アレッサンドロ・マルツォマーニョ,Alessandro Marzo Magno,清水由貴子
- 出版社/メーカー: 柏書房
- 発売日: 2013/03
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
「『愛書家(ビブリオマニア)』にとって、たまらない一冊である」と結論付けられている本書は面白そう。ただ、今の問題はそこではない。
「殷」。そもそも「殷」という字がついた熟語を使った記憶がない。「いんしん」と言えば(中学生が興奮しそうな意味もあるけれど)、じじいなぼくにとってはやはり中国の王朝名だ。「周が抜けてるぞ」ってなもんだ。
しかし、当然ながら「殷賑」は辞書に載っているし、Google日本語入力でも変換できた。
(「殷」はさかん、「賑」はにぎやかの意) 非常ににぎやかで活気に満ちていること。また、そのさま。
漢字の意味も載せてくれているので『精選版日本語国語大辞典』から引いた。他の辞書も語釈は同じようなものだ。
で、そもそも。「殷」に「盛ん」なんて意味があったのか。それすら知らなかった。
- 作者: 横山光輝
- 出版社/メーカー: 潮出版社
- 発売日: 2011/12/05
- メディア: 文庫
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
「殷」をチェックしてみる。
当時の王朝の人びとはみずからを商と称していたので,殷とよぶよりも,商とよぶのが正確であるが,日本では一般に殷の名を使用する。後の周の人びとが殷とよぶようになるが,その理由は明らかではない。
ついうっかり見てみたのは『改訂新版世界大百科事典』。謎が増えてしまったが、今はそこんところ無視。素直に漢和辞典を見てみる。
1)さか‐ん。盛大。さかんに音楽を奏する。 2)多い。大きい。ゆたか。富む。「殷賑(インシン)」
なるほど、ちゃんと『新漢語林』に書いてある。
これまでの人生で数えきれないほど「殷」という言葉を口にしてきたはずなんだけど、固有名詞以外の言葉として考えたことがなかった。ダセエ奴だなあと落ち込む日曜日になってしまった。
- 作者: ウィリアム・H.マクニール,William H. McNeill,増田義郎,佐々木昭夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/01
- メディア: 文庫
- 購入: 37人 クリック: 1,062回
- この商品を含むブログ (76件) を見る