たとえば「女子」などという言葉が気持ち悪く増殖している風もあり、気になったりする。
辞書に見る「女子」。広辞苑や大辞泉は第一義として「おんなのこ」を載せる。しかし新明解にあっては「長幼は問わない」と宣言する。最近の用法を見れば新明解が正しそうだが… #辞書 #国語辞典
— maeda hiroakiさん (@torisan3500) 2013年5月23日
「女子トイレ」はそもそも長幼を意識したものであるわけがないしね、などという指摘を受けたりもする。
ふむ。ではそもそもの「子」を見なくちゃだめか。
「子」を『新漢和大字典』で見ると「子どもの頭が大きいさま」とある。しかしもちろん「成人した男子」などの意味もあり「ニ三子」(にさんし)といえば「あなたたち」の意味になる #辞書 #漢字
— maeda hiroakiさん (@torisan3500) 2013年5月24日
国語辞典ではどんな感じかしらねと『新明解』第七版を見てみる。
【子】[1](1)夫婦関係にある一組の男女の間に生まれた人。また、自分たちの間に生まれたのと同じように養い育てる人。… (2)まだ一人前に成長していないもの。… (3)元のものから分かれて、新たに生じたもの。「芋の―/竹の―/元も―も無くす」…
嗚呼。『新明解』も好きなんだけど、こういうところはあまり好きじゃない。
たとえば『日本国語辞典』で「子」を引くと「親から生まれたもの」とある。この表現は多くの辞書に見られる。『新明解』は、そういう常識の中、敢えて「夫婦関係にある」などという無用な定義を入れて面白がっている。
- 作者: 森田良行
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1989/06
- メディア: ハードカバー
- クリック: 24回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
気持ちが萎えてしまったところで『基礎日本語辞典』を見る。立項されていないんじゃないかと思ったがちゃんとあった。
語釈の後に「分析」を行っているのだが、これがツボにはまると面白い。
「子」は人間とは限らない。…「カッちゃんカズノコ、鰊の子」…のように卵の状態も「子」とよんでいる。…現代語では「…子だくさん、子煩悩」「子宝…」…のように…複合して用いられるか、…修飾語を付けて用いる場合が圧倒的に多い。「子」を独立して用いる言い方は、故事・ことわざ、および、やや古い感じの文章的表現でみられる。「子は三界の首枷」「子ゆえに迷う心の闇」
その子当人に直接「お子さん」とよぶことはしない。…これと似た「お子様」は…「お子様用勉強机/…お子様ランチ」のように、一般の“小児”をさす…用法を持っている。「お子さん」にはこの用法がない。
『現代国語例解辞典』第四版も「『子』『児』が下につく語と成句・ことわざ」 を表にしていて面白い。
「子」や「児」が下につく成句・ことわざ via 現代国語例解辞典第四版 posted by (C)torisan
『新明解』も、もっと本質的な面白さを目指せばいいのに。
いずれにせよ「子」なんて言葉は複合語にもなりやすく、意味もたくさんある。きりがないので冒険は途中でおしまい。
- 作者: 林巨樹,松井栄一,小学館辞典編集部
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2005/11
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (4件) を見る