気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「女子」から始まり「子」を巡る冒険の途中

たとえば「女子」などという言葉が気持ち悪く増殖している風もあり、気になったりする。

「女子トイレ」はそもそも長幼を意識したものであるわけがないしね、などという指摘を受けたりもする。

ふむ。ではそもそもの「子」を見なくちゃだめか。

国語辞典ではどんな感じかしらねと『新明解』第七版を見てみる。

【子】[1](1)夫婦関係にある一組の男女の間に生まれた人。また、自分たちの間に生まれたのと同じように養い育てる人。… (2)まだ一人前に成長していないもの。… (3)元のものから分かれて、新たに生じたもの。「芋の―/竹の―/元も―も無くす」…

 嗚呼。『新明解』も好きなんだけど、こういうところはあまり好きじゃない。

たとえば『日本国語辞典』で「子」を引くと「親から生まれたもの」とある。この表現は多くの辞書に見られる。『新明解』は、そういう常識の中、敢えて「夫婦関係にある」などという無用な定義を入れて面白がっている。 

基礎日本語辞典

基礎日本語辞典

気持ちが萎えてしまったところで『基礎日本語辞典』を見る。立項されていないんじゃないかと思ったがちゃんとあった。

語釈の後に「分析」を行っているのだが、これがツボにはまると面白い。

「子」は人間とは限らない。…「カッちゃんカズノコ、鰊の子」…のように卵の状態も「子」とよんでいる。…現代語では「…子だくさん、子煩悩」「子宝…」…のように…複合して用いられるか、…修飾語を付けて用いる場合が圧倒的に多い。「子」を独立して用いる言い方は、故事・ことわざ、および、やや古い感じの文章的表現でみられる。「子は三界の首枷」「子ゆえに迷う心の闇」
その子当人に直接「お子さん」とよぶことはしない。…これと似た「お子様」は…「お子様用勉強机/…お子様ランチ」のように、一般の“小児”をさす…用法を持っている。「お子さん」にはこの用法がない。

『現代国語例解辞典』第四版も「『子』『児』が下につく語と成句・ことわざ」 を表にしていて面白い。

「子」や「児」が下につく成句・ことわざ via 現代国語例解辞典第四版
「子」や「児」が下につく成句・ことわざ via 現代国語例解辞典第四版 posted by (C)torisan

『新明解』も、もっと本質的な面白さを目指せばいいのに。

いずれにせよ「子」なんて言葉は複合語にもなりやすく、意味もたくさんある。きりがないので冒険は途中でおしまい。

現代国語例解辞典

現代国語例解辞典