読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

『文七元結』に登場する「切手」は、要するに商品券のようなもの。

とくに意図なく『古語大辞典』の「切手」の項を見て思い出した。『文七元結』に「切手」が出てくる。

 もちろん『文七元結』に出てくる切手はこの切手じゃない。出てくるシーンは最後の方。青空文庫にある『文七元結』で該当部分を見てみる。

番頭「それはね、彼処の魚屋の裏へ這入ると、一番奥の家で、前に掃溜と便所が並んでますから直に知れますよ」
主人「大きに有難う存じます、それから五升の切手を頂戴致します、柄樽を拝借致します、樽は此方持って参りますから」
と代を払って魚屋の路地へ這入って参ります。此方は長兵衞の家は昨夜からの騒ぎでございます。

「切手」についていろいろ説明を探してみたけど、Wikipediaが一番わかりやすいみたいだ。

「切手」という名称はもともとは持参人に表示された商品を引き渡す一種の商品券を意味するもので、当初は「切符手形」と称していたが、その後略されて切手とされるようになった。江戸時代には通称名を「蔵預かり切手」と呼称した。米切手はその代表格であり(米以外に大豆や生蝋・黒砂糖・小麦などもあった)と云われ、蔵屋敷などの交換所で商品と交換することができた。やがてこれらの手法が民間にも派生して、1777年には大阪の菓子屋、虎屋伊織が饅頭切手が発売。以後、羊羹やうなぎ、鰹節、酒などの切手も江戸を含む各都市の商家で発売され、庶民に定着した。

なんの追加説明もいらないくらいわかりやすい説明だと思う。「饅頭切手」ってのが民間では初めてなのか、と調べたくなるけれど、長い道のりになりそうだから「今日はこの辺で勘弁してやる」。

おしくら・まんじゅう

おしくら・まんじゅう

せっかくだから『古語大辞典』の方もみておく。

(3)(近世「わりふ」から転じて)物品の証拠券。特に、蔵米を売却する際、落札者に渡し、それと引き替えに「正米」を渡す米切手。また、商品券。切符。

まあWikipediaの説明と似たようなことが書いてあるかな。

但し「正米」はなんだろう。「正米」の反対語は「空米」(くうまい)なんだそうだ。ちょっと気になるので『日本国語大辞典』でチェックしてみる。

現物としては存在しない帳簿上の米。また、その米を売買すること。米の空取引。

「現物としては存在しない」云々と書かれるとわかりにくいけれど、要するに米相場を対象にした空取引のことを示すようだ。

マンガ日本相場師列伝―是川銀蔵・田中平八・佐藤和三郎・雨宮敬次郎 (PanRolling Library (なPR-5))

マンガ日本相場師列伝―是川銀蔵・田中平八・佐藤和三郎・雨宮敬次郎 (PanRolling Library (なPR-5))

Googleってみると、享保時代に「それまで禁止していた空米取引を許可」なんて言葉が見える。まだ読んでないんだけどWikipediaの「米相場」のエントリも参考になりそう。

あるいは「空米」の言葉ができてから「正米」ができたかな。

尚、「空取引」を調べようと「からとりひき」で『広辞苑』第六版をみると、これは空項目となり「くうとりひき」にリンクしている。『大辞泉』第二版では逆だ。広辞苑を引いておこう。

実物の授受をせずに、相場の高低で損益を計算し、差金をもって決済する取引。空相場。空売買。差金売買。

落語、気になった言葉を調べ始めると、往々にして底なし沼状態になってしまう。まあ落語好きにはそういう底なし沼状態が大好きだという人も多いのだと思う。

志ん生的、文楽的 (講談社文庫)

志ん生的、文楽的 (講談社文庫)