気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

『新明解』に「めぐみ」はない。

午前中、見るともなくテレビを付けていると試合中に対戦校の校歌が流れていた。日本大学第三高等学校日大三)のもの。その中に「若人われら 平和の芽ぐみ」という歌詞があった。

歌う国民―唱歌、校歌、うたごえ (中公新書)

歌う国民―唱歌、校歌、うたごえ (中公新書)

「芽ぐみ」という言葉をあまり耳にしたことがないように思う。

辞書にも、この「芽ぐみ」の形ではあまり掲載されていないようだ。手元の辞書で載っているのは『日本国語大辞典』だけかな。

(動詞「めぐむ(芽─)」の連用形の名詞化)
芽生えること。きざし。

「芽ぐむ」の形なら多くの辞書に載っている。 「萌む」とも書く。

めぐむ【芽ぐむ/萌ぐむ】
(1)芽が出はじめる。芽吹く。「木々が―・む春」《季 春》
(2)ある感情・状態などのきざしが見える。

上に引いたのは『大辞泉』第二版。2番目には里見弴の『多情仏心』から用例がとられている。曰く「はやくも破局は十分に―・んでいた」。

(「多情仏心」は以前の記事にも登場してる ~ 「多情仏心」は一般名詞だそうだが、どう使えば良いのだ?

多情仏心 (前篇) (岩波文庫)

多情仏心 (前篇) (岩波文庫)

それはともかく。「めぐみ」と発音する語はどの程度あるのだろうと気になった。

意外に少なく、たとえば『広辞苑』第六版なら「恵み」と「め組」の2つだ。ちょっと面白いから『日本国語大辞典』の「め組」をひいておく。

江戸の町火消いろは四十七組の一つ。ろ・せ・も・す・百・千の各組とともに二番組に属し、その管轄区域は日本橋以南芝浜松町まで、東は八丁堀・霊岸島・新堀町・南八丁堀・築地・鉄砲洲あたりまで。文化二年(一八〇五)の、芝神明境内での花相撲(はなずもう)の力士との大喧嘩は、後に竹柴其水(きすい)によって歌舞伎化された。

ちなみに「百」とか「千」とかは「へ」や「ひ」を置き換えたもの。


倖田來未 / め組のひと (1コーラス ver.) - YouTube

深入りすると話が別になっちゃうのでこの辺で。ともかく「めぐみ」という語は少ないのかな。『大辞泉』第二版もやはり2つ。『大辞林』第二版も同様だ。

『新漢語林』では、名前に使って「めぐみ」と読む文字がいろいろと載っている。「」「」「」「」「」など。それでもあまり多くはない。

なるほど。それであれば小型辞典はどうなのだ、ということでようやく本稿のタイトルに話がつながる。

実は『新明解』第七版に「めぐみ」という語は立項されていない。『三省堂国語辞典』第六版にもない。『明鏡』にもない。これはちょっと意外な感じがしないだろうか。

小型辞書はみんな項目がないのかと言えばそうでもない。例えば『岩波国語辞典』第七版・新版には「恵み」がある。『現代国語例解辞典』第四版にも「恵み」がある。『岩波国語辞典』の用例は「自然の恵みを受ける」。この用例に気づけば、やはり立項しておいて良いのかなと思う。

 『現代国語例解辞典』はちょっと変わった例をあげている。

  • 天の恵み
  • 恵みの雨
  • どうかお恵みを

『現代国語例解辞典』。もうちょっと深く付き合ってみようと思う。

現代国語例解辞典

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