一瞬悩んだ。「本領を発揮する」の「本領」は、たとえば鎌倉時代の「本領安堵」と同じ字で良いのかな。
もちろんいいのだ。「本領発揮」の「本領」は、土地としての「本領」が転じたものだ。
『広辞苑』第六版から引く。
ほん‐りょう【本領】
(1)もとからの領地。代々伝えられた領地。鎌倉時代、幕府から新たに恩給されたものでない、本来の所領。根本所領。本知。↔恩領。
(2)本来得意とするところ。特色。特質。「—を発揮する」
これには記されていないが、『岩波国語辞典』第七版・新版には、2の意味が1から転じたものであると書いてある。
但し、元々の意味である、土地としての「本領」の扱いはなかなか厳しい。たとえば『新明解』第七版における、土地としての「本領」の説明はごくわずかしかない。
本来の領地
これでは歴史の知識がなければ何もわからない。しかし歴史のことを書くならば、どうしても「幕府から与えられた」ということを書かざるを得ず、結構な長さになってしまいそうだ。
そんなわけで(?)、小型辞典にはラディカルな解決策をとるものもある。たとえば『明鏡』。「本領」についてを全文引いてみる。
ほん‐りょう【本領】
〖名〗 本来の特質。もちまえのすぐれた性質や才能。「―を発揮する」
そう。土地としての「本領」を一切無視するのだ。
すげえなあ、さすが明鏡だなあと感心してみたけれど、他にも結構「土地関係は無視!」があるみたい。
たとえば『現代国語例解辞典』第四版にも土地関連部分がない。「本来の特質。得意とするところ。特性」。『ベネッセ表現読解国語辞典』も同様だ。
なるほどなあ。そういう解決策を採用している言葉のリストなんてのもどこかにありそうだな。どういう検索をして良いのかわからないけれど。
ところで上に載せた『歩兵の本領』。Amazonの内容紹介を引いてみたい。
名誉も誇りもない、そして戦闘を前提としていない、世界一奇妙な軍隊・自衛隊。世間が高度成長で浮かれ、就職の心配など無用の時代に、志願して自衛官になった若者たちがいた。軍人としての立場を全うし、男子の本懐を遂げようと生きる彼らを活写した、著者自らの体験を綴る涙と笑いの青春グラフィティ!
読んだことないんだけど面白そうだな。 上に載せたのは短篇集全体。Kindle版で525円。短編をばらしても売っているようで、下のは「歩兵の本領」のみ。価格は100円。
なるほど、そういう売り方も面白い。
- 作者: 浅田次郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/08/09
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