ふと、『広辞苑』第六版の「川遊び」が目に止まった(ずいぶん季節外れな話だ)。
かわ‐あそび【川遊び】
川に舟を浮かべるなどして風情をたのしみ遊ぶこと。川逍遥(かわしょうよう)。
なるほど。確かに「川遊び」という語にはそこはかとない風情がある。季節外れついでに言えば「四万六千日。お暑い盛りでございます」ってなもんだ。
感心しつつ、他の辞書ではどうなのかと、やや風流とは縁遠いかもしれない『新明解』第七版を見てみた。
川遊び
川に船を浮かべて、歌を作ったり歌ったり飲食したりすること。
おそれいった。一層風流になった感じ。『新明解』を誤解しているかもしれないな。但し、現代でも「川遊び」といえばそういう風流な事象ばかりを指すものだろうか。
そんなことを考えつつ『岩波国語辞典』第七版・新版を見る。
川遊び
川に舟を浮かべ、風情を楽しんで遊ぶこと。また川で水遊びをすること。
なるほど。現代においてはやはり「水遊び」なども「川遊び」の仲間に入れておいた方が、話は通じやすいんじゃないかというのが岩波の提言だ。
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やはりそういうものかなと思いつつ、もう一冊だけと『明鏡』第二版を見てみた。するとこれが面白い。
かわ‐あそび【川遊び】
〖名・自サ変〗
川や河原で遊び楽しむこと。
▼昔は、船をやとって川の風情を楽しむ風流な遊びの一つだった。
わざわざ注釈の形で「昔は」と言及しているところにアジがある。『明鏡』は、昔を懐かしんでいるのか。それとも昔ながらに拘る人を(遠回しに)揶揄しようとするものか。
ちなみに、『国語辞典の遊び方』によれば『明鏡』というのは「スマートな現代っ子」なのだとある。「現代っ子」であれば、あまりに年寄り臭い言い方を揶揄してもよさそうだが、しかし「スマート」であれば、表立って反発はしないものかもしれないし…
『明鏡』というのは奇をてらうわけではないが、ときにしみじみおもしろい。
ところで『新英和大辞典』で「川遊び」も見てみた。一つ目は全く味気ない。
enjoy oneself on a river
「oneself」のあたりがとくに味気ない。但しそこで終わりではなく、以下、「〔船で〕 go boating [rowing, sailing] on a river; 〔泳ぐ〕 have a swim [dip] in a river.」と続いている。