言葉というよりも、語釈がともかく面白い。
ちょっとよくわからない『岩波国語辞典』の「エロティシズム」 #国語辞典 #辞書 pic.twitter.com/97VT8nPDVh
— maeda hiroaki (@torisan3500) 2013, 12月 11
ツイート中では「エロティシズム」と書いたけれど、正確には「エロチシズム」だな。「ティ」より「チ」の方が「昭和的」で素敵だ。
言葉としてももう一度載せておこう。
エロチシズム
男女間の性愛に関すること、そういうもの。性愛。
一見、何を言っているのかよくわからないあたりが楽しい。「そういうもの」ってなんだよ。最初に出てくる「性愛」と、最後に単語だけ挙げられる「性愛」にはどういう思い入れがあるんだよ。
(どわ。バタイユは文庫になってるのか)。
辞書の話に戻ると『日本国語大辞典』の例文も楽しい。たとえばこんな具合。
赤い孤独者 〔1951〕〈椎名麟三〉一・六「僕は、彼女の歩き方に、あるエロチシズムのあることを見た。細い身体が左右に柔かくねじれるように歩くのだ」
エロチシズムを感じるのではなく、「ある」ことがすごいじゃないか。あるいはこんな具合。
風媒花〔1952〕〈武田泰淳〉一「『時代の花』ね。あれですか。桂さんの代表作は。〈略〉あれはしかし、エロティシズムに逃げてるなあ。恋愛メロドラマでしょ」
何かに逃げているという批評は一時代を築いたものだった。
あるいは『角川類語辞典』なんかも面白い。
13 【エロチシズム(えろちしずむ)】eroticism 強烈な―を感じさせる ○愛欲に関すること
14 【アバンチュール(あばんちゅーる)】aventure仏 ―を楽しむ ○危険を冒す恋愛。火遊び
「アバンチュール」とか「火遊び」とか。一時はとてもはやった言葉だ。最近あまり聞かないように思うな。恋愛の世界ではもう「アバンチュール」と称されるようなものはなくなってしまったのかもしれない。今ある恋愛世界での危険は「ストーキング」か。
「火遊び」という言葉は、恋愛に限らず失われてしまったような感じもする。
あるいは『角川類語辞典』には「~イズム」用語も列挙されていて、これも楽しい。
- オカルチズム
- エキゾチシズム
- マンネリズム
- トリビアリズム
- ストイシズム
- ディレッタンティズム
辞書中ではそれぞれの語に説明がついている。ちょっと説明の難しい「トリビアリズム」を引いておこう。
○瑣末主義。ごく平凡なことをさも重要そうに扱う考え方。小説ではうその話を本当らしく見せかける逆説的効果を生む。
意味がよくわからないままに「そうかっ!?」と突っ込みたくなるあたりがスゴイ。
しかしまあ、『岩波国語辞典』の破壊力が一番だったかな。
「エロ」で、大いに楽しい時間を過ごさせてもらった。