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気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「げんげ」は花の形が「蓮の華」に似ているから「レンゲ」と呼ばれるようになった

自然

ふと思い立って、何年かぶりに『ヰタ・セクスアリス』を読み返している。

「げんげ」のところ、ついいろいろと感じ入ってしまうんだな。

西隣に空地がある。石瓦の散らばっている間に、げんげや菫すみれの花が咲いている。僕はげんげを摘みはじめた。暫く摘んでいるうちに、前の日に近所の子が、男の癖に花なんぞを摘んで可笑おかしいと云ったことを思い出して、急に身の周囲まわりを見廻して花を棄てた。幸さいわいに誰も見ていなかった。

まあ『ヰタ・セクスアリス」が主題でなく「げんげ」がメイン。これは「レンゲ」のことだ。てか、「げんげ」がオリジナルなんだそうだ。なるほど発音が似ているからかと思えばそうではない。「げんげ」の花が「蓮」の華に似ているので「蓮華草」と言われるようになったとか(知らなかった!)。

もちろん今は「レンゲ」と呼ばれることが多いので、『広辞苑』第六版などは「げんげ」に冷たい(『新明解』や『岩波国語辞典』でも同様)。

げんげ【紫雲英・翹揺】
レンゲソウの別称。[季語]春

期待通り(?)、『日本国語大辞典』では逆になる。

れんげ‐そう【蓮華草】
〔名〕
(1)植物「げんげ(翹揺)」の異名。《季・春》

そういえば田山花袋の『田舎教師』なども、冒頭に「げんげ」が出てくるのだった。 

四里の道は長かった。その間に青縞の市のたつ羽生の町があった。田圃にはげんげが咲き、豪家の垣からは八重桜が散りこぼれた。赤い蹴出を出した田舎の姐さんがおりおり通った。

但し、比較的古い言い回しが多いであろう「青空文庫」のサイトを指定して「レンゲソウ」と「ゲンゲ」を検索してみても、どうやら「レンゲソウ」の方が多い様子。果たして「ゲンゲ」としか呼ばれなかった時期はあったんだろうか。 

と、思ったら『日本国語大辞典』の「れんげ」語誌欄に記載があった。

(1)古くはゲンゲの方が優勢であったが、「和漢三才図会‐九四」(一七一三)に「砕米薺(レンゲハナ)俗云蓮華花(レンゲハナ)」とあるように、近世中期から次第に「蓮華」「蓮花」の表記でレンゲと呼ぶ例が増えた。現在目にする「紫雲英」の表記は比較的新しく、「れんげそう」の項の挙例「日本植物名彙」に見られる。

やつらが「古くは」というときは本当に古いんだな。著作権切れ誰も生き証人のいない時代のことだった。

もちろん食卓で使う「れんげ」も、もとは「レンゲソウ」じゃなくて「蓮」の方だ。 

常滑焼 うさぎの れんげ SAN2126

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