気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「初老」とは、「作業能力」が衰え始める頃のこと

旧来の定義を『大言海』新訂版で見てみよう。

志ョらう(名)初老
齢(ヨハヒ)ノ、四十歳ニ及ビタルコト。

まあ、これでショックを受ける人もいるかもしれない。定義によれば40歳が初老だ。ちなみに50歳は「中老」(先日『田舎教師』を読み返して、初めて「中老」という言葉があることを知った)。

余談ながら、『田舎教師』は面白単語を掘り出すのにすごく面白い。

田舎教師

田舎教師

 

それはともかく。当初の定義では40歳が「初老」だが、最近のニュアンスとは外れているところもあるだろうと、他の辞書も見てみた。

気に入ったのは『日本国語大辞典』。

しょ‐ろう[:ラウ] 【初老】
〔名〕
四〇歳の異称。また、老人の域にはいりかけた年頃。寿命がのびた現在では、五〇歳から六〇歳前後をさすことが多い。女性では月経閉止期、男性では作業能力が衰えはじめたときから老化現象が顕著になるまでの期間。

女性のことはよくわからないのでおいておく。

男性の「作業能力が衰えはじめた」という言葉に、いろいろと感じてしまうな。とくに「月経閉止」と列記されると、いろいろといらぬ想像をしてしまいそうになる。 いろいろと応用範囲の広そうな言葉だ>「作業能力」。

定年で男は終わりなのか

定年で男は終わりなのか

 

尚、比較的新しい辞書では「初老」に対する「気づかい」がみられる。思いがけない優しさをしめすことがある『新明解』第七版から引いておこう。

しょろう【初老】
肉体的な盛りを過ぎ、そろそろからだの各部に気をつける必要が感じられるおよその時期。〔もと、四十歳の異称。現在は普通に六十歳前後を指す

『新明解』の「おもてなし」だな、きっと。 

近代国語辞書編纂史の基礎的研究―『大言海』への道

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