中学生が「傘下」が読めないという。(甲子園の)「銀傘」の語で「さん」を説明しようかと思ったが、東京で「甲子園」はマイナーかもしれない。
それならば、と「落下傘」を例に出した。
空の神兵 (落下傘部隊の歌) 昭和17年(1942) - YouTube
ところがそもそもその「落下傘」が通じない。絵に書いて説明したら「それはパラシュートでしょう」と。
ふ~む。気になったので『三省堂国語辞典』第七版で「落下傘」をチェックした。
落下傘[落下傘]
(名)
パラシュート。
う~ん。「パラシュート」なら説明無くしてもわかるけれど、「落下傘」ってのは「ほれ、あの、パラシュートのことだよ」と言ってやらないと通じないということか。
ちなみに「パラシュート」にはなんと書いてあるのだろう。
パラシュート
(名)〔parachute〕
飛行機からとびおりて安全に着陸するための、かさのような形のもの。落下傘。
こちらには説明がある。すなわち「パラシュート」の方が、より基本的な語彙であるということなんだろう。
「落下傘」とか「落下傘部隊」という言葉には、なんだかドキドキを感じてしまうんだけどなあ。
他にもチェックしてみると、たとえば『広辞苑』第六版の「落下傘」は「パラシュート」への空見出し。 『明鏡』もそうだ。
井の頭池の掻い掘りは、外来種を駆除して固有の生態系を取り戻す目的もあるのだと聞いた。国語の世界も外来種に駆逐されているものがあるんだな。「トイレ」なんかもそうか。
「落下傘」が通じずに「パラシュート」なら通じる。ちょっと不思議な体験が、まあ、楽しかった。
陸上自衛隊 第一空挺団 上空1,200mからのパラシュート自由降下 - YouTube
ところで青空文庫を「落下傘」で検索するとかなりの件数が出てくる。
落下傘で降下して、草原にすとんと着く、しいんとしている。自分ひとり。さすがの勇士たちもこの時は淋しいそうだ。新聞の座談会で勇士のひとりがそう言っていた。そのような謂わば古井戸の底の孤独感を私もその夜、五合の酒を飲みながらしみじみ味った事である。