気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

各辞書が意外に力をいれている「ごみ」

5月30日は「ゴミ0の日」なんだそうで。そんなわけで「ゴミ」を見てみると、それぞれの辞書でかなり気合が入っていて面白い。

「こんなに書くか」と驚いたのが『日本国語大辞典』。用例を除いて引いてみる。

ごみ 【塵・芥】
〔名〕
(1)水の中に浮遊したり、水の底に沈殿したりしている泥。
(2)泥状のもの。
(3)泥や土ぼこり。
(4)その場所をよごしている、役に立たない、きたないもの。ちり、あくた、かす、くずなど。
(5)役に立たず、価値のない、または、とるに足りない人や物を比喩的にいう。

なるほど。これくらい分類しないといけないものか。わざわざ「人」に言及しているのが面白いけど、なかなかキツイ。

どうやら、もともとは泥のようなものを呼び始めたのかな。『広辞苑』にも「泥」が出てくる。

ごみ【塵・芥】
(1)濁水にとけてまじっている泥。
(2)物の役に立たず、ない方がよいもの。ちり。あくた。ほこり。また、つまらないもの。

小型辞典になると、そうした歴史的な部分は省かれる。たとえば『岩波国語辞典』。よくみると漢字も省かれている。こちらの方は用例も興味深いので載せておこう。

ごみ
使って役に立たなくなった紙くずや食物のくず、その他の廃棄物。「―みたいな(=価値の乏しい)論文が多い」

ごみ本来でなく、わざわざ比喩を例示するのがちょっと面白いな。

ゴミ分別の異常な世界―リサイクル社会の幻想 (幻冬舎新書)

ゴミ分別の異常な世界―リサイクル社会の幻想 (幻冬舎新書)

 

岩波国語辞典』とやや似たニュアンスながら、悲哀感が出ているのが『新明解』だ。ちなみにこちらも漢字表記はない。

ごみ
用が終わって、もう捨てられるだけの(捨てられた)物。〔広義では、その場に自然にたまる土・砂・ほこりなどをも含む。

少しさびしくなったりしないだろうか。

『現代国語例解辞典』には、「ごみ」と「くず」の区別がまとめられていた。

「ゴミのような人間」とは言う気がするな。しかし「人間のクズだ」の「クズ」を「ゴミ」に置き換えるとちょっと変か。道にあるのは「ゴミ」だが、部屋にあるのは「ゴミ」でも「クズ」でも良さそうだ。

考えてみると意外に難しいぞ!