小学生の理科、「沸騰しているやかんから出てる白いものは液体でしょうか、気体でしょうか」なんて問題が出てくる。「湯気」と「蒸気」を区別させたいわけだ。
たとえば『広辞苑』の「湯気」は次のようにある。
ゆげ【湯気】
(1)湯・水・氷などの表面から立ちのぼる水蒸気が小さな水滴となり、白く煙のように見えるもの。
(2)「ゆけ」に同じ。
たいていの辞書で同様の定義になっている。すなわち、水蒸気が液体になったものが「湯気」なのだ。
ところが、意外なことに『日本国語大辞典』は我が道をいく。
ゆ‐げ 【湯気】
〔名〕
(1)湯や熱い食物などから立ち上る水蒸気。いげ。
(2)水・氷などから立ち上る水蒸気。
(3) ゆけ(湯気)。
ここでは「水蒸気 = 湯気」となっているのだ。
おうちに『日本国語辞典』を揃えている小学生の子が、理科の先生につっかかって涙したりはしないだろうか。
ちなみにこれは『日本国語大辞典』のうっかりミスではなく、「水蒸気」の項でも「湯気のことも水蒸気と言うのだ」と強弁している。
すい‐じょうき 【水蒸気】
解説・用例〔名〕
水が蒸発してできた気体。湿度の高いとき空気中に多く含まれる。温度が下がったり、圧力が高くなったりすると、凝結 して液体の水になる。摂氏三七四・二度(水の限界温度)以上ではいくら圧力を高くしても、液体あるいは固体にならない。一般には、これが空気中で凝結して 水の細かい粒となったもの(湯気)のことをもいう。蒸気。
編纂者の子供時代、湯気と水蒸気にまつわるいやな出来事でもあっただろうか。