辞書をめくっていて「外食」に出会った。当たり前の言葉ながら辞書による微妙な差が面白い。
たとえば『新明解』は、わりと無色透明な定義をしている。
がいしょく【外食】
(自サ)
家庭で食事をせず、食堂・料理やなどで食事をすること。また、その食事。
確かにそんな感じだ。『三省堂国語辞典』はけっこう「かわいい」定義をする。
がいしょく【外食】
(名・自サ)
自分の家でなく、まちの食堂などで食事をすること。
「まちの食堂」がちょっとかわいい。
一方で『広辞苑』はかなりぶっきらぼうだ。
がいしょく【外食】
家庭外でする食事
「家庭外」という言葉にちょっと「どきっ」としてしまったりする。大辞泉も似ている。
がい‐しょく【外食】
[名](スル)家庭以外で食事をとること。また、その食事。
「家庭外で」とか「家庭以外」などと言われると「うちでは奥さんが待っているのに…」なんていう不道徳方面を頭に浮かべてしまう。
独自のスタンスを持つのが『岩波国語辞典』。
がいしょく【外食】
(名・ス自)
家庭外で食事すること。その食事。特に独身者などが、食堂を利用してする食事。
「結婚」制度についての味方が時代遅れであるとか、「炎上」してしまわないかやや心配だ。
閑話休題。
「外食」で十分盛り上がったけど、本稿の本題は「外食」じゃない。いくつかの辞書に「外食」の関連語として挙げられている「中食」とか「内食」のことだ。
『三省堂国語辞典』にあるのはまだしも、『広辞苑』でも立項されている。
なかしょく【中食】
店で買って家に持ち帰り、すぐ食べられる調理済の食品。外食に対していう。ちゅうしょく。
そして「内食」も載っている。
ないしょく【内食】
(1)内緒でこっそり食事すること。
(2)家庭で調理してする食事。外食や中食に対していう。うちしょく。
こういう言葉があるという噂は聞いていた。でもごく一部で使われているだけだと思っていたな。しかし広辞苑ってのは、言葉が死後になってから載せる辞書であるらしい。
「言葉が死語となってから収録する」という姿勢が鮮明なのが、岩波書店の『岩波国語辞典』であり、『広辞苑』でしょうか(サンキュータツオ) via 望星 2月号 #辞書 #国語辞典
— maeda hiroaki (@torisan3500) 2015, 1月 20
う〜ん。絶対に一般化せずに消えていく言葉だと思っていたけどなあ。しかしどうやら既に一般化している言葉だということか。
ちなみに『新明解』では第七版にも「中食」「内食」の項目はないようだ。