気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「もぬけの殻」の「もぬけ」ってなんだ?

ふと「もぬけの殻」の「もぬけ」が何なのか気になった。そう、50年間、知らずに生きてきたのだ。

「蛻の殻」という漢字であることも今日はじめて知ったところ(下の写真は『新明解漢和辞典』)。

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よくもまあ知らずに平気でいられたもんだな、とは思うんだけど「もぬけ」ってのは「もぬける」(ないし古語では「もぬく」)という動詞から生まれた言葉なんだそうだ。

まあ順を追って「もぬけの殻」から引いておこうか。『日本国語大辞典』をみる。

もぬけ の 殻(から)
(1)セミやヘビのぬけがら。もぬけ。
(2)人の抜け出したあとの寝床や住居などのたとえ
(3)魂が抜け去った体。死骸。

そういえばぼくは、(2)の意味の「もぬけの殻」が「たとえ」であることも意識したことがなかったな。

上の「もぬけの殻」は「もぬけ」の子項目となっている。「もぬけ」をみてみよう。

も‐ぬけ 【蛻・裳脱・藻抜】
〔名〕
(動詞「もぬける(蛻)」の連用形の名詞化。「藻抜」はあて字)
もぬけること。また、そのぬけがら。

ああ、失礼。こりゃまったく意味がわからないな(笑)。「もぬける」を見るべきなんだな。

も‐ぬ・ける 【蛻】
〔自カ下一〕 もぬ・く〔自カ下二〕
(1)セミやヘビなどが外皮を脱ぐ。脱皮する。
(2)抜けて外に出る。抜ける。脱する。脱出する。

なるほどなあ。「もぬけの空」なんじゃないかと考えたりもしたんだけど、なるほど「から」は「殻」じゃなくちゃ意味が通じないのだな。

「もぬける」の用例も見ておこうか。上の語釈と同じく『日本国語大辞典』から。

源氏物語〔1001〜14頃〕若菜下「もぬけたるむしのからなどのやうにまたいとたたよはしげにおはす」

なるほどなあ。

現代でも「もぬける」という言葉を使うことはあるんだろうか。そう思って『三省堂国語辞典』をみると「もぬけ」で立項して「セミ・ヘビなどが、外の皮をぬぐこと」と説明している。

動詞でないものを動詞的に語釈する場合、その語はたいてい「昔の言い回し」を意味してるんだと思う。子項目にはとうぜん「もぬけの殻」がある。『新明解』も同じような感じ。『岩波国語辞典』を同様かな。

結局、小辞典をあたる限りでは「もぬけ」ないし「もぬける」が「現代語」ではないような感じかな。「もぬける」を知らなかったぼくとしてはちょっと安心だ。

それにしても「もぬけのから」なんていう不思議な言葉があったら、辞書を引いてみるのがふつうだろうに。自分の感性力(?)の低さにがっかりだ。

(昆虫)セミの抜け殻(5個) 本州・四国限定[生体]

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