気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「好事家」と評価されたら喜ぶべきか、悲しむべきか。

好角家」という言葉があるそうだ。『三省堂国語辞典』や『岩波国語辞典』などの小型辞典にも載っているので、まあ一般的な言葉なのだろう。

この「好角家」で思い出したけれど、「好事家」という言葉があるな。『明鏡』でみてみる。

こうずか【好事家】
〔名〕変わったことに興味をもつ人。また、風流を好む人。

むむ?

「好事家」とは「何かがすきな人」ではなく「変わったこと」が好きな人なのか。すると、人から「好事家」であるとの評価をうけたら「変人」とか「変態」と言われたのだと解するべきなのだろうか。

他の辞書もみてみる。まあ『日本国語大辞典』だな。

こうず‐か[カウズ:] 【好事家】
〔名〕ものずきな人。また、風流を愛する人。こうずしゃ。こうじしゃ。

ふむ。「変わったこと」ってのはないな。べつに変人変態的という評価ではないのだろうか。

そう思いつつ、念の為に『日本国語大辞典』で「ものずき」を見てみることにする。

もの‐ずき 【物好・物数奇】
〔名〕(形動)
(1)物事に特別の趣向を凝らすこと。風流なおもむきを好むこと。また、そのようなものや人。そのようなさま。すき。
(2)好み。趣味。
(3)好奇心が強いこと。また、そのような人や、さま。
(4)普通と違った物事を好むこと。風変わりなものを好むこと。好事(こうず)。また、そのような人やさま。

わはは! (4)に「普通と違った」「風変わり」な奴が「好事家」であると書いてある(笑)。「同好の士」の間で「好事家」と呼ばれるならまだしも、一般的に「好事家」と呼ばれた場合には「馬鹿にされているのではないか」とよく考えてみる方が良いようだ。

ドビュッシー音楽論集―反好事家八分音符氏 (岩波文庫)

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