国語辞典で算数・数学用語などをみるのはなかなか楽しい。今回は「角錐」をみてみた。そしてその定義が面白くて「円錐」を引いてみた。
「角錐」とは「一つの多角形を底面とし、その各辺上のすべての点と平面外の一点とを結ぶ各三角形を側面とする立体」であり、「円錐」とは、「円の円周上のすべての点と、その円の平面外の一定点とを結んでできる立体」。 via 『明鏡』 #辞書 #国語辞典 #算数 pic.twitter.com/W5Yizw0YJd
— maeda hiroaki (@torisan3500) 2017年2月11日
上のツイート内にもあるけれど、『明鏡』の「角錐」を抜き出しておく。
一つの多角形を底面とし、その各辺上のすべての点と平面外の一点とを結ぶ各三角形を側面とする立体。
「各三角形」と、改めて言われると「ほほ〜っ」なんて感心してしまいそうになる。そしてこの定義をみれば「円錐」の方もみたくなる。
円の円周上のすべての点と、その円の平面外の一定点とを結んでできる立体。
なるほど、同じやり方か。側面の形についての言及がない分、「円錐」の定義は短くなるのだな。
ほかの辞書ではどうか。たとえば『広辞苑』はこんな具合。
かくすい【角錐】
平面上の多角形(底面)の周上の各点と、その平面上にない一点とを結ぶ線分(母線)を引いたとき、それらの線分および底面で囲まれる多面体。
「同一平面にない」というのは、シンプルでかつ専門的でもあって、なかなか良い切り口に感じる。ただし「円錐」はかなり難しい。「円錐」とは「円錐面」と一平面で囲まれた立体であると定義し、子項目で「円錐面」を定義する。
えんすいめん【円錐面】
一つの直線lのまわりに、これと交わるもう一つの直線l'を一まわりさせたときl'の描く曲面。lを軸または回転軸、lとl'の交点を頂点、l'を母線という。
ほとんどの人は、ここから「円錐」を想像するのが難しいのではないかと思ったり。
『新明解』はどうか。
かくすい【角錐】
底面が多角形をなす錐体。
ずいぶんシンプルだ。これは別に立項している「錐体」に説明の多くを譲っているから。
「円錐」もやはり定義に「錐体」を使っている。
えんすい【円錐】
〔幾何学で〕底面が円をなす錐体。例、とんがり帽。〔頂点から底面におろした垂線の足が底面の中心と一致するとき、「直円錐」と言い、狭義ではこれを単に「円錐」と呼ぶ〕
「円錐」の例が「とんがり帽」であるのは不思議な感じ。と、いうか「円錐」というのは抽象的な概念のように感じるので、それにれに具体的な例が存在すること事態が不思議だ。
いずれにせよ、『明鏡』以外では「円錐」の方が難しそうな定義になるみたいだ。
そう思いつつ『三省堂国語辞典』をみてみる。まずは「角錐」から。
かくすい【角錐】
〘数〙底が多角形で、先がとがった立体。例、ピラミッド。
ふむ。シンプルだ。「先がとがった」という定義がありなのかと感心したり。『新明解』にはない「角錐」の「例」があるのも興味深い。
さて、「円錐」はどうだ。
えんすい【円錐】
〘数〙底はまるく、先がとがった立体。例、とんがり帽。
ふーむ。やはり「シンプル」なわかりやすさを目指す定義だ。ただ「とがった」にやや曖昧な感じをうけ、それにひきずられて底面が楕円でも「円錐」なのか、楕円以外のゆがんだ円であっても「円錐」なのか。新たな疑問が生じたりはする。
なお、『岩波国語辞典』の「円錐」は『明鏡』とほぼ同じ。
えんすい【円錐】
平面上の円の円周上の各点と、その平面上にない一点とを結んでできる立体。
円が平面上にあるというのが『明鏡』との違いか。ところで、平面上にない円を底面とする円錐ってのはあるんだっけな。
まあ、みているとお勉強したくなったりするわけで、やぱり「数学on国語辞典」は面白い。