『王国の独裁者』という本を読んでいると、気になる表現が出てきた。「何もかもワヤ」という表現だ。
ぼくはてっきり「わや」という表現は関西弁なのかと思っていた(ぼくは中高と大阪で過ごした)。
しかし純然たる関西弁であれば、こういう翻訳本であえて使う意味もない感じ。 『日本国語大辞典』をみてみた。
わや
(「わやく」の変化した語)
(1)道理に合わないこと。無理を言ったりしたりすること。また、そのさま。無法。無茶。
(2)駄目なこと。無駄なこと。むちゃくちゃになること。だいなしになること。また、そのさま。
(3)もろいこと。弱いこと。また、そのさま。
(4)うそ。にせ。近世の芝居者の通言。
ふむ。どうやら古語の「わやく」がオリジナルであり、もしかすると「共通語」なのかもしれない。 『古語大辞典』もみてみよう。
わやく
無理なこと。無法。むちゃ。また、悪ふざけ。腕白。「わや」とも。
ふ〜む。さらに「古語」の時代から「わやひん」(わや品)なんて言葉もあったみたい。
わやひん【わや品】
悪質の品
古語にも方言があったのかどうかとか、どう扱えば良いのかとかを、不勉強にして知らない。しかしとりあえず「方言」であるとの注記なく、「古語」の時代には全国で(?)使われていたんだろうか。
「方言じゃなかったのか〜」なんて思いつつ、他の辞書にもあたってみた。
たとえば『三省堂国語辞典』。
わや(名・形動ダ)〔西日本方言〕
(1)だめ。
(2)めちゃくちゃ。
おっと、「方言」であると記されている。『広辞苑』はどうだろう。
わや(関西方言。「わやく」から)
(1)道理に合わないこと。乱暴なこと。無茶。
(2)もろいこと。よわいこと。
(3)だめなこと。めちゃくちゃ。
こちらも「方言」説だな。
やはり方言なのかな、と、最後にもう1冊だけと『新明解』をみてみた。
わや
〔大阪を中心として南は長崎、北は愛知・岐阜から北陸の方言〕めちゃめちゃだ。
わっはっは。新しい概念に出会ってしまった。すなわち「全国で使う方言」。
はたして、それだけあちこちで用いる「方言」は「方言」であるのかどうか。古語の時代にも「方言」と認識されていたのかどうか。また、『王国の独裁者』の訳者の方は、「方言」と意識しつつ何かの「あじ」を出そうと使ったのかどうか。
難しい話で、「さっぱわや」になってきた。
ちなみに訳者はロアルド・ダールなんかも訳している。
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