ちょっと前(第四版)の『三省堂国語辞典』を見ていて驚いた。「生」(なま)の定義だ。
すなわち「とってきた動物・植物を、煮たり焼いたりする前の様子」なんだそうだ。
「生」とは「とってきた動物・植物を、煮たり焼いたりする前の様子」。
— maeda hiroaki (@torisan3500) March 12, 2017
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身勝手な感想かもしれないけれど、なんだかかわいそうな定義に思えるなあ。『三省堂国語辞典』編纂者もそう思ったか、第七版では「食べ物を煮たり焼いたりしていないようす」と、語釈を変更している。
「そりゃそうだよな、怖いもの」と思ったんだけど、でも実は「動物を煮たり焼いたりする前のこと」ってのは「一般的」な定義である様子。
たとえば『広辞苑』だ。
なま【生】
動植物を採取したままで、煮たり、焼いたり、乾かしたりしないもの。また、その状態。
う〜む。「採取」だ。さらに「乾かす」なんていう残酷な(?)調理法も加わっている。
『日本国語大辞典』は多くの語釈を載せているが、やはり同様の定義がある。
植物や動物が生きて生活していた時と同じであること。それらの加工していない状態をいう。また、そのもの。成熟していない状態や十分に物が乾いていないことにもいう。
「生きて生活していた時と同じ」というのは、当然「生きて生活していない時」との対比であるわけで、偽善者なぼくはちょっと怖い。
『岩波国語辞典』にもやはり動物に関する言及がある。
食物として取った魚・獣の肉や野菜などを煮焼きしたり干したりせずにあること。
ふむ。「乾かす」と同じだけど「干す」ってのも、「動物」をイメージして読むと怖いものだな(なお、個人的には使ったことのない「煮焼き」なる語は、ちゃんと『日本国語大辞典』にも立項されている)。
ふとみた「生」に、生物界における「生産者―消費者―分解者」の厳しい連鎖をみたようで、少々怯えてしまったりしているところだ。