気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「イヒョウヲツク」を漢字で書ける?

普通の人は書ける。ただ、一瞬「イヒョウヲツク」の漢字が思い浮かばなかった(老化によるのかもしれない)。

ここでいう「イヒョウ」とは、次のような意味だ(『広辞苑』)。

いひょう
考慮に入れていないこと。思いの外。意外。

さて、そんな意味はぼくだってよく知っている。しかし、そうした意味を念頭において「さて漢字ではどう書いたかな」と思うとわからなくなってしまったのだ。

ぼく以外のほぼみんなが知っていることだけれど、「イヒョウ」は「意表」と書く。でもなんでだろう。

「意図の外」という意味なのに「図を現する」みたいな漢字が使われるのはなぜだ?

実はこの「表」は「そと」という意味なんだそうだ。『日本国語大辞典』をみる。

いひょう【意表】
(1)(「表」は外の意)考えに入れていないさま。意外なこと。思いの外。案外。また、そのおどろき。意表外。意想外。

「意識」の「外」にあることを「意表」というようなのだ。しかし面白い。「意表」は「意表外」であるとも言っている。

「表(ソト)」の「外」は内じゃないのかどうか。

たぶん「意表外」はもともと誤用から始まったんじゃないのかな。ぼくのように、「意表」なら「意識の外」でなく、「意識を表す」ものだろうとか考えた人がいたんだろう。それで「意識を表す」その「外」ということで「意表外」なんて言ってしまったんじゃないかと思う。

「『表』とは外側なのです」という権威筋の教えに納得できないバカがたくさんいたんだと思うな。

日本国語大辞典』は、上にかいた「(1)」の意味に続き「(2)」の意味を記している。

(2)心の中の思い。考え。意中。意向。

ね。「意表」を「意識を表す」と考えてしまうやつらはいたんだよ。「なぜ『意表』が『意外』という意味になるのかなあ」と思ったのはぼくだけじゃないっ!

ところで、さらにバカをさらすけれど、ぼくは「意表に出る」という表現を知らなかった。「意表」は「つく」ことしかできないのかと思っていたよ。

人生の中で何度か使ったことのある「意表」だけど、意表をついて難しい表現だったのだな。

 

 P.S.

下に『詩の玉手箱 ― 意表をつく51編の名詩』という本がのっている。一般的に「意表をつく詩」というとなんなんだろうな。たとえば井上陽水の「傘がない」に意表をつかれない人はいないんじゃないか。ただぼくは、中島みゆきの「真直(まっすぐ)な線」の方により意表をつかれた。小学生の頃、詩の内容を把握して知らず踊りだすような衝撃を受けたなあ。

ちなみに「真直な線」に匹敵するのは「ミネソタの卵売り」なんじゃないかと思ってる。「黄身と白身のない卵ってなんだよ」と、大いに悩んだのは小学校3年生の頃だった。


ミネソタのたまご売り/暁テル子

みんな去ってしまった

みんな去ってしまった

 

 ロシアフォルマリズムに教わるまでもなく(ってか、ロシアフォルマリズムが先か^^)、日本では「異化」も「意表」をつかずに行われたりするのがおそろしい(誇らしい)。