雨ばかりの10月だった。なんてことを考えていると、ふと「雨足」の語が気になった。「雨足」って「速い」んだっけ、「強い」んだっけ?
小寒い雨がまだ止んでいなかった。四囲にもりもりと波がムクレ上ってくると、海に射込む雨足がハッキリ見えた。
これであれば「雨足」は「速い」のでなく「強い」のだろう。
ちょっと検索してみると、asahi.comでも「雨足」は「強い」という言葉と結びつけてつかっているみたい。
しかし「雨足が速い」という言葉もあるはずだよなあ、と辞書をみる。とりあえず『日本国語大辞典』。
あま‐あし 【雨足・雨脚】
(1)雨が降りながら通り過ぎていくこと。また、その速さ。
(2)白い糸すじのように見える、地上に降り注ぐ雨。
*大道無門〔1926〕〈里見 〉隣人・三「窓硝子に打ちつけて来る雨足(アマアシ)は、平たくなって、お互の厚みを重ね、不思議な紋様を描きながら流れくだった」
*伊豆の踊子〔1926〕〈川端康成〉一「雨脚が細くなって、峰が明るんで来た」
(3)乱層雲、積乱雲から雨が降っているとき、遠くから見て雲が筋になって落ちているように見える部分。
ふむ。
やはり「雨足が速い」」という表現はありそうだ。しかしもともとはどうなんだろう? 上の『日本国語大辞典』の用例にあるように、川端康成も「細い雨足」という使い方をするのであれば、やはり「強弱」で使うのが「ふつう」なんだろうか。
Googleってみてもちょっとはっきりしないので辞書をあたってみた。『新漢語林』に、オリジナルを示すヒントになりそうな記述があった。
雨足(ウソク)
(1)あまあし。線状に見える雨。
(2)(あめたる)雨がじゅうぶんに(たくさん)降る。
(3)(国)(あまあし)降雨が(たとえば東方から西方に)通過する速度。
(国)とは日本国内の用法。すなわち「速い」と結びつける用法は、日本で生まれた(オリジナルではない)用法であるようだ。『新漢和大字典』でも、やはり(3)の用法を(国)扱いとしている。
もしかすると異説があるのかもしれないけれど、とりあえず一件落着ということにしておこう。
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