国語辞典をめくっていてちょっと驚いた。ほぼすべての国語辞典が「昼過ぎ」を立項しているのだ。かつ、定義はまんま昼過ぎ。だれがどういう意図で載せ始めたんだろうなあ。
たとえば『新明解』は次のように定義する。。
ひるすぎ【昼過ぎ】
(1)正午を少し過ぎたころ。
(2)午後。
ちょっとどういう意図で、なんのために載せているのかがよくわからない。これが『新明解』だけなら、まあ「またなんか狙ってるんだな」で済む。しかし、たとえば『岩波国語辞典』も「正午を過ぎたころ」と定義し、『明鏡』も「正午を過ぎたころ。また、午後」と定義する。
はたして、「正午を過ぎる」とか、「午後」という言葉の意味を理解する人が、国語辞典で「昼過ぎ」を引くことがあるんだろうか(なお、『三省堂国語辞典』は「昼過ぎ」を載せていない)。
変だなあ、なぜだろうなあと思っていると、『日本国語大辞典』にヒントを見つけた。やはり「昼過ぎ」を立項しているのだが、「午後」以外の意味も載せているのだ。
ひる‐すぎ 【昼過】
(1)正午を過ぎた頃。午後。ひるさがり。
(2)(形動)衣服などが、かなり色あせて古びていること。また、そのさまやそのもの。中古。昼頃。昼さがり。
(3)(形動)盛りを過ぎていること。また、そのさま。昼頃。昼さがり。
(4)「ひるさがり(昼下)(2)」に同じ。
なるほど! もしかすると、もともとは(2)以下の意味を説明するために、いろいろな辞書が「昼下がり」を載せ始めたのかもしれないな。いつしか(2)以下の意味で「昼過ぎ」を使うことが少なくなり、それで「無用」と判断して意味を削っていったのかもしれない。それで今では言わずもがなの意味のみが残るということになっているのではなかろうか?
ちなみに『広辞苑』も「古くなったこと。また、盛りをすぎたこと」という意味を記している。
まあこれはぼくの勝手読み。でも「そう考えれば納得がいくぜ!」なんて嬉しくなっているGW終盤の土曜日なのだった。