「剣呑」という言葉が好きだ。というか、好きだった。「剣呑」は「危険」というような意味だけど、「剣を呑む」ような危険ってのがいったいどれほどのものなのかドキドキしてしまうじゃないか。
ところが、「剣呑」とは単なる当て字であるらしい。
「剣呑」は、「剣を呑む」危機ではなく、「剣難」がなまっただけなんだって。すごくがっかりだ(笑) #漢字 via 漢辞海 pic.twitter.com/BcXS3aMOJE
— maeda hiroaki (@torisan3500) July 19, 2018
『広辞苑』もみてみた。
けんのん【剣難・剣呑】
(けんなんの転という。「剣呑」は当て字)あやういこと。あやぶむこと。
載っている用例がちょっとわかりにくいので『虞美人草』(夏目漱石)から引いてみる。
おい君、そう後足(あとあし)で石を転(ころ)がしてはいかん。後(あと)から尾(つ)いて行くものが剣呑(けんのん)だ。
「あぶないじゃん!」というのを「剣呑だぞ!」なんていうわけだ。
この言葉を初めてみたときから、「剣を呑むなんて、どんな故事が背景にあるのだろう?」なんて気になっていた(そのわりに今まで調べてみなかった^^)。
ところが背景になんの故事もなく、ただ「剣難」ってことばが「けんのん」と発音されることがあって、その発音にあてて「剣呑」という言葉が生まれた様子。
せめて(?)「剣難」に何かしら難しい含蓄があったりしないかと、『広辞苑』に項目を探す。
けんなん【剣難】
刀などで殺傷される災難。
こちらもあまりにストレートな言葉であるよ。「剣呑」になんだかわくわくしてしまった、ぼくの40年ほどをなんとかしてほしいものだ^^。
但し「剣難」。吉川英治が『剣難女難』という話を書いている。未読だけれど、もしかすると、この話はわくわくできるのかもしれないな。