気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「いかず後家」という言葉は誤用から生まれた?

いつものように国語辞典を眺めていた(実は最近COD12版に浮気しているけれど^^)。眺めていたのは『岩波国語辞典』。「いかず後家」なんて言葉に久しぶりに出会ったけど、ちょっと気になることが書いてあった。

いかずごけ【行かず後家】
(1)(略)
(2)婚期を過ぎて、結婚しない女性。
(2)は誤用から生じた

結婚せずに婚期を過ぎた女性を「行かず後家」と呼ぶのは「誤用」から生じたんだそうな。知ってました?

(尚、『新明解』第七版には「いかずごけ」も「いかず」も立項されていない)。

「誤用」なのかどうか。『広辞苑』第七版をみてみる。

広辞苑は「いかずごけ」は「いかずおば」(行かず小母)と同義だとして、「行かず小母」を次のように定義している。

嫁に行かないで、独身暮しをしている女性。

別に「誤用」であるとの言及はない。では『岩波国語辞典』はいったいどういう誤用だと言っているのか。「いかずごけ」の全文を引いてみる。

いかずごけ【行かず後家】
(1)婚約者と死別あるいは生別の後、結婚していない女性。
(2)婚期を過ぎて、結婚しない女性。 ▷(2)は誤用から生じた。

なるほど! 確かに言われてみればそうだ。結婚しないからといって「後家」になるわけじゃない。後家になるためには、相手になるべき男性が必要なんだな。

なるほどなあと『日本国語大辞典』もみてみる。

いかず‐ごけ 【不嫁後家】
婚約者と死別、または生別して、未亡人同様に暮らしている女性。また、婚期を失い独身で過ごす女性。ただし、近世上方語では、前者をいい、後者を「いかず」として区別した。

なるほど、こちらも「死別」ないし「生別」が条件だ。さらに「いかず」の語誌もみてみる。

「いかず(5)」と「いかずごけ」との間には、本来明確な区別があり、近世上方語では、「いかず」のほうは、婚期を失した独身女性をいうのに対して、「いかずごけ」は、婚約中に相手と死別・生別し、未亡人同然に暮らしている女性をいったが、現代では意味が混同され、「いかず(5)」の意味で使われている。

もともと「行かず後家」と「行かず」を区別していたが、混同されたとなっている。

ま、今では「後家」なる言葉もほとんど使われないのだろうから、「後家と行かず後家には違いがあったのだ!」なんて学習しても、生産性も何もない^^。

あ、「生産性」といえば「行かず」には「役に立たない」という意味もあるんだそうだ。トレンディだなあ。