気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

アリスは間違っていたのか?!

「アリス」。知らないかなあ。70年代後半からヒットしていた日本のフォークグループだ。そんな彼らの大ヒット曲のひとつに「冬の稲妻」がある。


Alice - 冬の稲妻

あなたは稲妻のように」という歌詞から始まる曲だ。あなたは、稲妻のように、私の心を引き裂くのだ。

ただコーラス部の英語では「You're rolling thunder」と言っている。歌の中では「稲妻」=「Thunder」となているわけだ。

別に問題ないように思える。

しかし。(わざわざ)辞書を見るとちょっと気になることが書いてある。「稲妻」=「Thunder」ではないようなのだ。

「稲妻」からみてみようか。

# 本題とははずれるが「稲妻」のかなが「いなずま」であることには納得できない^^

三省堂国語辞典』を引く。

いなずま【稲妻】
雲と雲、雲と地上(にあるもの)との間に電気が流れたときに、すじのように見える強い光

まあとくに問題は感じない。稲妻とはそういうものだ。では次に「thunder」を引いてみる。英語学習者に親切なLDOCEをみてみる。

thun‧der1 /ˈθʌndə $ -ər/  noun
1[uncountable] the loud noise that you hear during a storm, usually after a flash of lightning:  We were woken in the night by thunder.
2[singular] a loud deep noise:  She heard the thunder of hooves behind her.

1の語釈によれば、「嵐の際に響く大きな音。稲光の後に聞こえる」ものだとのこと。つまり、「thunder」とは、雷の際に聞こえる「音」のことなのだ。

よくわからない話かもしれないので、ちょっと振り返ってみて欲しい。上に引いたように「稲妻」とは「」のことだった。しかし「thunder」は「」のことなのだ。誰も(アインシュタインも)「音=光」などとは言っていない。

アリスは「あなたは稲妻のように」といいつつ、しかし「You're rolling thunder」と言った。これは「音=光」と言っているわけで、間違いだったのだ。

ぼくの小学中学時代は、大のフォークギターブームで、ぼくも何台かもっていた。もちろんアリスも弾いた。しかし当時は「や〜い、アリス間違ってるじゃん」と思わなかったな。

思うに。アリスは「rolling thunder」という表現に出会い、そこから曲のイメージをふくらませたのではなかろうか。rolling thunder → 嵐 → 稲妻と連想していったのかな。そして「あなたは稲妻」「You're rolling thunder」と、うるせえ奴に突っ込まれる歌詞を生み出してしまったのかもしれない。

アリス・ザ・ベスト~遠くで汽笛を聞きながら~

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ツインベスト

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