気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

贓物牙保罪

読めないし、意味のわからないこの言葉。最初に出会ったのは中学1年の頃だったか。『白昼の死角』の中でのことだった(ちなみに「ぞうぶつがほ」と読む)。

白昼の死角 (光文社文庫)

白昼の死角 (光文社文庫)

 

ぼくはこれを読んで、将来は徹底的に勉強して詐欺師になる、と心に決めたのだった(後者についてはまあ成功したといえるのかもしれない…)。

それからしばらくして、ぼくは法律を学ぶことになり、そしてそのお勉強はむちゃくちゃ楽しかった。ぼくを支えた(?)のは、「贓物牙保罪」。

ひさしぶりにそんな言葉を思い出したんだけど、どうやら現代には「贓物牙保罪」というものは存在しないんだそうだ。

そういえば、そんな話もきいたっけなあ。「贓物牙保罪」の文言をみて、何をどうする罪なのか、きちんと答えられる人は少ないのだと思うし。

しかも「贓物」も「牙保」もわからないというダブルな謎言葉。素敵すぎるものなあ。

ちなみに「贓物」。『日本国語大辞典』ではこんな感じ。

ぞう‐ぶつ[ザウ‥] 【贓物】

窃盗、詐欺などの犯罪行為によって不法に手に入れた他人の財物。ぞうもつ。

なぜそれを「贓物」というのかについてはおいておこう。それに続くは「牙保」だ。

が‐ほ 【牙保】
売買の取次をして、その中間に立って利をかせぐこと。また、その人。仲買(なかがい)。がほう。ブローカー。

「牙保」ってのは、「まっとう」な商売なのかな(よくわかんない)。しかしそれが「贓物」と繋がって用いられると、徹底的にあくどい犯罪商売っぽくなるのも不思議な話だ。

立法者は、「贓物を牙保るのはけしからん!」とか考えたのかどうか。それとも立案する際に国語辞典ないし漢和辞典を参考にしたりしたのかどうか。

「贓物牙保罪」ってものがなくなってしまった今。Googleってみても「それは昔の呼び方です」なんて話ばかりがヒットする。誰が、なぜ、どんな理由でこんな言葉を使ったのか。ちゃんと勉強した人はよく知っていることなんだろうけれど、ぼくには不思議でよくわからない、いらっとしつつ興味をもってしまうお話だ。

模範六法2019 平成31年版

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刑法各論

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