日本ハムの「中華名菜 酢豚」ってのを食べた。肉、人参などの調理済み食材がパウチに入っていて、それを玉ねぎ(自分で用意)と一緒に炒めるというもの。大量にあったキャベツも入れてみたんだけど、うまかったな。
それはともかく、食べながら思った。これって「レトルト食品」なんだろうか?
ちなみに、ぼくにとって「レトルト」の代表といえば「ボンカレー」。というか、これ以外の「レトルト食品」を知らなかった時代も長かったような気がする(1968年販売開始)。
密閉して、遮光した袋に入っていて、かつ温めるだけで食べられるのがレトルトだろうか。すると今回食べた酢豚は「フライパン」で調理したから「レトルト」とは言えないのかもしれない。
で、国語辞典を見てみた。子供の頃から馴染んだ「ボンカレー」に敬意を表して(?)、最初にみてみたのは『小学新国語辞典』。
「レトルト」の項目はなかったが、「レトルト食品」があった。
レトルトしょくひん【レトルト食品】
アルミニウムなどのふくろに入れた、調理済みの食品。
いきなり微妙な話だな。この項目で大事なのはなんだろう。
「アルミニウムなどのふくろ」が大事なんだろうか? つまり、アルミなどのように光を通さない密閉した入れ物というのなら、「中華名菜 酢豚」はレトルトではない。透明なビニールのような入れ物に入っているからだ(具材の話。ソースは「いかにもレトルト」な袋に入っている)。
あるいは、「調理済みの食品」がキーワードなのであれば、「中華名菜 酢豚」も「レトルト食品」と言えるのかもしれない。
でもそんなこと言ったら調理済み弁当なんかも「レトルト」に仲間入りしてしまいかねず、やはりキーワードは「アルミニウムなどのふくろ」の部分か?
わからないので『新明解』をみてみた。こちらもやはり「レトルト食品」の項目がある。
レトルト食品〔retort = 蒸気殺菌がま、 pouch = 袋詰の食品〕即席食品の一種。完全調理済みの食品を袋に入れ、蒸気がまの中で加熱・殺菌して密閉したもの。食べるときには、袋ごと数分間湯の中(電子レンジ)で温めてから取り出す。
ふむ。蒸気がまで加熱殺菌したかどうかなんてのは、見ただけではわからないな(わかるのかもしれないが、ぼくにはわからない)。
ただ、こちらの定義によれば「袋ごと湯の中で温め」たり、「電子レンジ」で加熱して食えるものが「レトルト食品」である様子。すると今回食べた「中華名菜 酢豚」はレトルトではない。
但し、『三省堂国語辞典』では調理の仕方についての制限は記されていない。
レトルト食品
調理済みの食品をふくろにつめ、高圧釜で殺菌したもの。
そもそもレトルト(retort)とは「滅菌するための密封容器」というような意味があるようで、やはり大事なのは「釜で殺菌」が大事なんだろう。
「へー、なるほどね」。
と、わかったフリをして終わりにしたいところ。しかし今回食べた「中華名菜 酢豚」がレトルトなのかどうかはわからない。もちろん殺菌処理はしているんだろう。しかしそれが「高圧釜」で殺菌されたのかどうかはわからない。
やっぱ大御所に頼むのか、と『日本国語大辞典』をみてみた。
レトルト‐しょくひん 【─食品】
({英}retort pouch の訳語)
インスタント食品の一種。プラスチック‐フィルム製の袋などに入れ、高圧殺菌した完全調理済みの食品。食べるときには、数分間熱湯にいれてあたためる。常温で一年以上保存できる。
あはは。さらに難しい条件が付加されたな(笑)。「温めたら食える」だけでなく、常温で1年以上保存できなけりゃいけいないんだそうだ。
手に余るな。ぼくが今日食べた「中華名菜 酢豚」がレトルトかどうかにこだわるのはやめよう。人に問われたら「酢豚を作る半完成パッケージ」だとかなんだとか説明することにしよう。
しかしなんだ。「レトルト」ってのは「手軽」なものだと思っていたのに、奥が深いもんなんだな。
1972年CM 大塚食品 ボンカレー 「大塚のボンカレー・子連れ狼」編 笑福亭仁鶴