気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

いん・しゅう・しん・かん・さんごく・しん(もしもしかめよかめさんよ)…

ぼくはリズムなしでそのまま覚えた中国歴代王朝。

その「殷」を使った「殷賑」という熟語があるのを知りませんでした。出会ったのは本日(2013年5月13日)の日経新聞読書欄。

15世紀から16世紀前半までのヴェネツィア共和国は、東方交易で膨大な富を蓄積し、「アドリア海の女王」と謳(うた)われ、ヨーロッパの三大メガポリスの一つとして殷賑(いんしん)を極めたのだった。

紹介されている本は『そのとき、本が生まれた』。紹介者は法政大学名誉教授の川成洋。

そのとき、本が生まれた

そのとき、本が生まれた

「『愛書家(ビブリオマニア)』にとって、たまらない一冊である」と結論付けられている本書は面白そう。ただ、今の問題はそこではない。

「殷」。そもそも「殷」という字がついた熟語を使った記憶がない。「いんしん」と言えば(中学生が興奮しそうな意味もあるけれど)、じじいなぼくにとってはやはり中国の王朝名だ。「周が抜けてるぞ」ってなもんだ。

しかし、当然ながら「殷賑」は辞書に載っているし、Google日本語入力でも変換できた。

(「殷」はさかん、「賑」はにぎやかの意) 非常ににぎやかで活気に満ちていること。また、そのさま。

漢字の意味も載せてくれているので『精選版日本語国語大辞典』から引いた。他の辞書も語釈は同じようなものだ。

で、そもそも。「殷」に「盛ん」なんて意味があったのか。それすら知らなかった。

殷周伝説 1―太公望伝奇 (潮漫画文庫)

殷周伝説 1―太公望伝奇 (潮漫画文庫)

「殷」をチェックしてみる。

当時の王朝の人びとはみずからを商と称していたので,殷とよぶよりも,商とよぶのが正確であるが,日本では一般に殷の名を使用する。後の周の人びとが殷とよぶようになるが,その理由は明らかではない

ついうっかり見てみたのは『改訂新版世界大百科事典』。謎が増えてしまったが、今はそこんところ無視。素直に漢和辞典を見てみる。

1)さか‐ん。盛大。さかんに音楽を奏する。 2)多い。大きい。ゆたか。富む。「殷賑(インシン)」

なるほど、ちゃんと『新漢語林』に書いてある。

これまでの人生で数えきれないほど「殷」という言葉を口にしてきたはずなんだけど、固有名詞以外の言葉として考えたことがなかった。ダセエ奴だなあと落ち込む日曜日になってしまった。

世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)

世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)