『明鏡』を眺めていると「その日」という項目があった。
(1)ある事が行われた日。また、ある事が行われる日。その当日。「―はひどく暑かった」 (2)さしあたっての今日。今日現在。「―の暮らしにも事欠く」
「さしあたっての今日」という言い方が面白いけれど、「その日」を立項する理由と、この語釈の有用性がわからない。
『広辞苑』第六版にも立項されていて、語釈は「その当日。」だ。『大辞林』第二版も『大辞泉』第二版も同じような感じ。
こんな項目はいらないんじゃないか。いずれも「その日暮らし」とか、そういうサブ項目でしかきちんとした説明をしていない。
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と、思いつつ『日本国語大辞典』を見てようやく理由がわかった。
(1)その当日。ある人にとって特定の日。特別な事のある日。当日。 (2)わざとはっきりいわないで漠然とある日を示す。何日。 (3)今日現在。今日。
たとえば1番めの意味の例として「木曾左馬頭、其日の装束には、赤地の錦の直垂に、唐綾おどしの鎧きて」と、義仲最期の日の文章が引かれている。
また2番めの意味としては源氏物語から「その日とさだめて、にはかなるやうなれど、おかしきさまに、はかなうしなして、左右の御ゑどもまいらせ給ふ」というのを引いている。
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いずれも文脈から「まさにその日」という意味だとか、あるいは「正確な日時を示したり、特定の意味をもって定めた日ではないある日」という意味が読み取れるけれど、これならば国語辞典に説明があってもさほど不思議じゃない。
きっと、こういう解説を載せているうちに、ページ数削減だとかいろいろな必要があって省かれていったんじゃないのかな。
実際『三省堂国語辞典』第六版や、『岩波国語辞典』第七版・新版には「そのひぐらし」の項目はあるけれど、「そのひ」の項目はない。
個人的には外してしまう方が潔く感じるな。
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