釈迦の遺骨を「舎利」という。
①仏陀または聖者の遺骨。塔に納めて供養し、広く信仰の対象とされた。仏舎利。 ②死骸を火葬にした後に残った骨。
これは『広辞苑』第六版。仏教のことなどを全く知らないけれど、さすがに「舎利」の言葉は聞いたことがあった。
2番目の語義の例文は『大辞泉』第二版がなかなか味わいがある。
「お舎利になって砂に埋まっちゃやそれっきりだからな」。〈中勘助・鳥の物語〉
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でも『広辞苑』3つ目の語義をみて、「やっぱり物事をしらないな」と思った。
③俗に、米つぶ。また、米飯。「銀—」
え。
米の飯を「銀シャリ」ということがあるのは知っていたけれど、「仏舎利」の「舎利」と同じ「舎利」なのか!
『日本国語大辞典』にもある。
(形が(1)に似ているところから)米粒。米。また、白飯。
ここでいう「(1)」ってのは広辞苑の1番目とほぼ同じ。つまり遺骨の形と米粒の形が似てるんだそうだ。
語誌欄にも説明がある。
(3)の意は、仏舎利が米粒に似ていることによっており、近世から例が見え始める。ただし、仏舎利と米粒とを結び付ける発想は中国唐代に既に見られ、日本でも空海撰「秘蔵記‐上」に「天竺呼米粒為舎利。仏舎利亦似米粒。是故曰舎利」とある。もっともこれらの記述自体は、梵語の「米s´ali 」と「身体s´arra 」との混同に基づくらしい。
『日本国語辞典』では「銀シャリ」も引いてみた。意味は「白米の飯」とあるだけだけど、用例が面白い。
肉体の門〔1947〕〈田村泰次郎〉「この水で、米をとぎ、横文字のはいったバターの二ポンド入り空缶を飯盒がはりに、飯を炊くと、素敵滅法界な銀しゃりが炊ける」
これ以前にも「銀シャリ」の使用例はあるのかな。「滅法界」とマッチしていて面白い。
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ちなみに「銀シャリ」の語釈は『大辞泉』第二版や『岩波国語辞典』第七版・新版がいい。ここでは『岩波国語辞典』の方を引いておこう。
白米の飯。▷第二次大戦末期や戦後の食料不足のころによく用いた。
「よく用いた」に悲哀がある。