高校講座の日本史(南北朝の内乱の回)を見ていたら(趣味なのだ)、南北朝時代の「悪党」について、『峯相記』の文書が映ってた。その中にあった言葉が「乱妨」。
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そういう表記もあったかと、『広辞苑』第六版をみてみた。
(1) 乱暴に同じ。東鑑(15)「—狼藉を致すの由」
(2) 掠奪(りゃくだつ)すること。うばいとること。御伽草子、一寸法師「まづ打出の小槌を—し」
なるほど。同じものだと言ってるな。古い話っぽいので『古語大辞典』も見てみる。「らんばう」で立項されており、漢字としては「濫妨・乱妨」があがっている。
暴力で他人の物をかすめ取ること。【語誌】単に粗暴な行為をするというのではなく、物を奪い取るの意。…古辞書類では、濫妨、乱妨に作るが、「乱暴」とするものはない。古文献をみても同じで、「乱暴」は新しい使い方である。
なるほど。こちらも表記が時代によって変わってきたというスタンスか。但し、「粗暴な行為」ではなく「奪い取る」ということだという記述が気になる。
そして『日本国語大辞典』や『大辞泉』第二版などでは、「奪い取る」かどうかで「乱妨」と「乱暴」を区別する。『大辞泉』をみておく。
暴力を使って物を奪い取ること。
「徒党を結び強訴一揆などとて―に及ぶことあり」〈福沢・学問のすゝめ〉
これが「乱妨」。そして「乱暴」は次のようになっている。
(1) 道理を無視して、荒々しい振る舞いをすること。また、そのさま。「酔って―を働く」「―な男」「―されたと訴える」
(2) やり方・扱い方が、荒っぽく雑であること。また、そのさま。「―な運転」「道具を―に扱う」「それは―な話だ」
傷害と暴行の違いのようなものか?
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もともとは表記の違いだったけれど、表記が変わってから別の意味も生まれてきたという感じなんだろうか。その辺り、よくわからない。
ま、南北朝時代とは「悪党」の意味も変わってきてるみたいだしな、とわけのわからぬ納得力で理解しておく。
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