18日の日経新聞文化面に別役実が寄稿していた。タイトルは「台詞と科白」。
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読みは同じだが、両者は違うものだという話。そして「科白」が「台詞化」しているんじゃないかと話す。
舞台で俳優がしゃべる言葉を「せりふ」と言うが、これを漢字で書く場合、「台詞」と「科白」の二通りがある。もちろん、内容も少し違う。「台詞」は言葉だけのものを言い、「科白」は、それに仕草(しぐさ)が加わったものを言うのである。
国語辞典をみても区別はよくわからない。 だが「科白」を「かはく」と読んで辞書をみると別役実と同じく別が書いてある。
知らざあ言って聞かせやしょう―心に響く歌舞伎の名せりふ―(新潮新書)
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まず「せりふ」を『広辞苑』第六版で見る。
せり‐ふ【台詞・科白】
(1)芝居で、俳優が劇中の人物として述べることば。
(2)きまり文句。儀礼的な口上。
(3)苦情を言うこと。言い分を述べること。談判。
(4)支払いをすること。
(5)ことば。言いぐさ。
見出しをみてわかる通り、国語辞典では一般に「台詞」と「科白」を区別しない。では「かはく」を見る。
か‐はく【科白】
俳優のしぐさとせりふ。特に、せりふ。
もともとはしぐさを含んでのものだったが、そのうちに言葉を指すようになった様子。
この「かはく」という言葉。あまり聞いた覚えがないけれど小型辞典にもほぼ掲載されているみたいだ。
- 作者: 藤枝善之
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ちなみに別役の言う「台詞化」とは「言葉は、意味の記号化された『台詞』としてのみ流通し、『科白』としての質感を失っていったのである」ということ。ここだけ抜き出すと陳腐に見えてしまうかもしれない。舞台での所作の説明もあって面白い論考だった。
- 作者: 別役実
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- 発売日: 2012/11
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余談ながら『新明解』第七版の「せりふ」がよくわからなくて興味深かったので引いておこう。
せりふ【(台詞)】 (一)俳優が舞台で劇中の人物として言う言葉。(ニ)【(科白)】結果として相手を傷つけたり不快感を与えたりするような言葉。
凡例によれば『新明解』は漢数字により多義語を分類して示すようになっている。「(ニ)」の後ろに「科白」という感じが書かれているということは、「(一)」の意味では「科白」を用いないということなのだろうか。
よくわからない。
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