この両者はよく戦ってくれる。今回の戦いのテーマは「破鏡」(はきょう)だ。
よくあることなんだけど、『新明解』第七版は「ロマンス」を信じる。
〔一時的に別れなければならなくなった夫婦が、後日の証拠として鏡を割ってその一方ずつを持ったという故事から〕夫婦の離別。
すなわち『新明解』は「再会」を前提としているのだ。「ロマンス」だなあ。
ではライバルの『岩波国語辞典』第七版・新版はどうか。
夫婦の別離。離婚。(略)▷ われた鏡はもとどおりにならないという意から
どうだろう。こちらは「もとどおりにならない」ことが大前提。いつも大いに戦ってくれる両者だが、ここまで反対のことをいうのは珍しい。
但し、この言葉のいわれについては、一般的には別の説が立てられているようだ。該当部分を『日本国語大辞典』から。
(離れて暮らさなければならなくなった夫婦が、鏡を割ってそれぞれの一片を持ち、愛情のあかしとしたが、妻が不義を働いたために、その一片がカササギとなって夫の所へ舞いもどり、不義が知れて離縁となったという「神異経」の故事から)
まあある意味でいえばこれが一番残酷か。再会を約束しているのに、そこで改めて不幸が訪れたという意味なわけだ。
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