うちに鳩時計があるんだけど、辞書で引くと意外な語釈で驚いた。
たとえば『新明解』第七版を見ると、中から鳥が出てくることはさほど重要でないような書き方だ。
『新明解』による「鳩時計」。「重りを使ってねじを巻く仕掛けの掛け時計。〔時刻を知らせる時、巣から鳩(=実はカッコウ)が出てきて鳴く。今は電池式がほとんど〕。 < 大事なのは「鳩」(ないしカッコウ)の部分じゃないのかなあ。「重り」の方が大事なのかなあ #辞書 #国語辞典
— maeda hiroaki (@torisan3500) 2014, 1月 17
「鳥が出てくる」ということじゃなく、重り式であることの方が、鳩時計の本義であるのだろうか。もちろん「実はカッコウ」も気になるところ。
『三省堂国語辞典』第六版を見る。
はとどけい【鳩時計】
(名)
中から作り物のハト(じつは、カッコウ)が出て、鳴き声で時刻を知らせるしかけの掛け時計。
こちらも「じつは、カッコウ」だ。もしかして小型辞典にはことごとく「じつはカッコウ」があるのだろうか。『岩波国語辞典』第七版・新版を見てみた。
はとどけい【鳩時計】
おもりを使った掛け時計で、時を報ずる際、巣からはとが出て「ぽっぽ」と鳴くさまを模した仕掛けの物。
「ぽっぽ」が可愛い。いや、本題はそこじゃなかった。岩波は「鳩」派なんだな。それはそれで当然なのか。
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中型辞典ももちろん気になるところだ。『広辞苑』第六版。
はと‐どけい【鳩時計】
錘(おもり)を使用した掛時計の一種。時を知らせるとき、巣箱から木製の鳩が現れて時刻の数だけ鳴くもの。
こちらも「鳩」だ。ところで中型辞書は全体的に「重り」や「錘」を重視していて、それが『新明解』などに波及したんだろうか? 見てみると『大辞泉』も「おもり」に言及している。
はと‐どけい 【鳩時計】
おもりを動力とした掛け時計の一。時刻がくると、鳩の模型が時計の箱の小窓から現れて時の数だけ鳴く仕掛けのもの。
そうか、おもりに言及するのは中型辞典からの「決まり」みたいなもんなんだな。確認のために『大辞林』第二版を見てみた。
はとどけい【鳩時計】
掛け時計の一種。時計の箱の扉が開くと、中から鳩が現れ出で、鳴き声で時刻を告げる仕掛けのもの。
「現れ出で」が格好良いが…、ふむ、おもりについての記述はない。
結局「まあ、いろいろあるんだな」で落ち着くしかない。ついでなので『日本国語大辞典』も見ておこう。
はと‐どけい 【鳩時計】
〔名〕 錘(おもり)を動力とした掛時計の一つ。時を告げるのに、鳩が巣から現われて時刻の数だけ鳴くしかけになっている。
*失楽園殺人事件〔1934〕〈小栗虫太郎〉二「やがて、屍体から右手の壁にある、鳩時計が鳴き始めると」
*格子の眼〔1949〕〈島尾敏雄〉「ポッポ、ポッポ。鳩時計が時を知らせた」
う~む、こちらはおもりについて言及しているな…。触れるか触れないを決定する際の「議事」など見てみたいものだ。
尚、中型辞典以上では「実はカッコウ」もないようだ。「実はカッコウ」は、どのあたりに源があるんだろうか。
ところで『日本国語大辞典』の用例にある『失楽園殺人事件』は、青空文庫でも無料で読むことができる。