見坊豪紀の『ことばの海をゆく』に「さきどなり」という言葉があった。三省堂交互辞典で見るとこんな具合。
小説のタイトルのような語釈 「となりの もう一つ先の となり」 via 三省堂国語辞典 #国語辞典 #辞書 pic.twitter.com/rVN3iV8FrY
— maeda hiroaki (@torisan3500) 2014, 4月 3
「さきおととい」という言葉もあるし、「さき」を接頭語にした言葉は理解しやすい。ただ「さきどなり」の関連語に「てまえどなり」というのもあるのだそうだ。
てまえ‐どなり【手前隣】
解説・用例
〔名〕
(「さきどなり(先隣)」に対して)すぐとなり。
これはちょっとわからない。すぐ隣なら「となり」と言えばいいじゃないか。なぜわざわざ「さきどなり」というのか。考えてみた。
考えたこと
「先隣り」という言葉や「手前隣り」という言葉があるのだということは、そもそも「隣」とは「近く」という意味だったのではないか。
言われてみれば納得できる(まあ言ってるのも自分だが)。そうであるに違いない。
しかし『広辞苑』は冷たい。
となり【隣】
(1) 横に相接した位置。またその位置にあるもの。伊勢物語「伊勢の国なりける女、またえ逢はで—の国へいくとて」
(2) 特に、相接する家。隣家。万葉集(14)「—の衣(きぬ)を借りて着なはも」
ぼくの検索意図に対する『広辞苑』からの返事をまとめると「隣は隣だよ、ば~か」って具合。
悔しいので『学研新漢和大字典』を見てみた。若干編集しつつ引く。
【隣】
(1) (名)連なった土べいや住居。となりどうし。
(2) (名)まわりにいる同類。仲間。
(3) (動)すぐそばに連なる。となりに並んで連なる。また近づく。
(4) (名)周代の行政区画で、五家の集まりのこと。
む? この(4)番目はちょっとナイスなんじゃないか。五軒先くらいまでは普通に「隣」と呼ぶので、それで「先隣り」や「手前隣り」という言葉が生まれたんだ。
たぶん間違っているんだろうけど。
ちなみに『新漢語林』によれば、「五戸を隣、五隣を里という」んだそうだ。
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