国語辞典をみていると、つい笑ってしまうことがある。「大変だな」とか「頑張ってるんだな」と感じてしまうことがあるからだ。たとえば「色」を三省堂国語辞典で引く。
いろ【色】
(名)
(1)ものの表面から目に感じる、形以外のもの。(以下略)
目で見てわかるが、形ではない。まるでなぞなぞのような定義だ。
しかしまあ確かに「色というもの」を言葉で説明するのは難しそうだ。それにしても、こんななぞなぞ風にしなくてもやりようがあるもんだと、『広辞苑』をみてみた。
いろ【色】
(1) 視覚のうち、光波のスペクトル組成の差異によって区別される感覚。光の波長だけでは定まらず、一般に色相、彩度および明度の3要素によって規定される。色彩。
なぞなぞ風ではなくなったのかとも思ったが、よく見れば同じようなもの。「スペクトル組成の差違」ということで、「形ではない」ということを表現しているわけだ。
では、その『広辞苑』における「形」はいったいどのように定義しているだろう。
かたち【形・容】
感覚、特に視覚・触覚でとらえ得る、ものの有様(ただし色は除外)。(以下略)
これはすばらしい。色が「形でないもの」なのであれば、「形」が「色以外のもの」であることは道理だ。
辞書編纂者が「頑張っている」感じが面白いな。
ちなみに『新明解』は、少々頑張りすぎているかもしれない。長いし、書き写すのが難しそうな語釈なので写真を紹介。
「色」の国語辞典的定義はけっこう難しい via 新明解 #国語辞典 #辞書 pic.twitter.com/tHrCIjKcYe
— maeda hiroaki (@torisan3500) 2014, 4月 17
そんなことを考えていると、どこかからTEDの「色彩は音である」というプレゼンテーションが流れてきた。葬式のときはB minor色の服を着るのだそうだ。
ところで「色」関係では本も難しいんだな。「日本の色・世界の色」と、タイトルを見ただけでは何の本なのかわかりにくい。
Amazonに掲載されている説明文を引く。
茜色(あかねいろ)、瑠璃色(るりいろ)、浅葱色(あさぎいろ)、萌葱色(もえぎいろ)といった和の色名と、ローズピンク、ターコイズブルー、サックスブルー、モスグリーンといった西洋の色名のそれぞれを、由来となった事物、色名からイメージされる風景や動植物、鉱物等の写真で紹介した美しい「色名の事典」です。カラフルで美しい写真とそれぞれの色の解説が心地よく心に染み入るはずです。エピソードそれぞれの色のRGBやCMYKの数値も紹介しているので、それぞれの色を再現する際の目安になるはずです。写真集として、また配色や色決めの参考書として、手元に置いておきたい一冊です。
なるほど。本の説明を見るだけでもずいぶん時間がかかりそうだな。