「うたた」というのが何なのかはとても気になる。「ウツツネ(現寝)の転」だという説もありながら(大言海)、「よくわからない」というのが本当のところらしい。
「うたた」はよくわからないんだけど、「うたたね」の必要十分条件は結構きびしいようだ。たとえば『広辞苑』をみる。
うたた‐ね【転た寝】
寝るつもりでなく横になっているうちに眠ること。ころびね。かりね。古今和歌集(恋)「—に恋しき人を見てしより」。「—して風邪をひく」
「寝るつもり」があってはいけないのだ。「5分だけ!」であっても、それは「寝るつもり」があるから「うたたね」ではないのだろう。また、椅子に座ったまま、横にならないでいてもいけないらしい。
椅子に座ったままではダメだ。ではベッドでちょっと横になれば良いのか。それも微妙なところなのだ。『新明解』を見る。
うたたね【転(た)寝】
(自サ)
〔副詞「うたた」と同源か〕正式に床に入らず、しばらく寝ること。
ここにある「正式に」はなかなか曲者だ。「お床入り」の話ならば「正式」もわかりやすいが(?)、「うたたね」における「正式」は難しい。たとえば『三省堂国語辞典』は「服を着たまま」を必要条件とする。これはもしかすると「正式」の要件なのかもしれない。
ちなみに『明鏡』でも「寝床に入らないで、ついうとうとと眠ること」とあり、「正式」も何も、ともかく「寝床に入らない」というのが必要条件であるとしている。
ともかく。「うたたね」というのは実は難しいものである様子。「ついうっかりうたた寝しまして」というのはほぼ不可能なのかもしれない。「さあ、俺はうたた寝をするぞ!」というしっかりした準備が必要な行為なのかもしれない。
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