気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「クーデター」と「革命」の違いを述べよ

1932年に立憲君主制に移行したタイ。以来、クーデターは19回目なんだそうだ。それでも一時は「民主主義の優等生」と呼ばれたんだとか。よくわからんな。

ところで「クーデター」と「革命」の違いってのはなんだ。簡単な定義を求めて国語辞典を引けば、非常にわかりやすい説明が載っていた。『広辞苑』を引く。

クー‐デター【coup d’Etat フランス】

(「国家への一撃」の意)非合法的手段に訴えて政権を奪うこと。通常は支配層内部の政権移動をいい、革命と区別する。

「支配層内部」における政権の移動だ。「なるほど!」と叫びたくなるほどわかりやすい。

実はこの語については、小型辞典もかなり頑張っている。『明鏡』を見る。

クーデター[coup d’État フランス]

〖名〗

武力などによって非合法的に政権を奪うこと。「反政府軍が―を起こす」

▶ 体制の変革を目指す革命とは異なり、権力移動は支配階級の内部で行われる。原義は、国家への一撃の意。

「革命」と混同されがちな言葉なんだな。

クーデターの政治学―政治の天才の国タイ (中公新書)

クーデターの政治学―政治の天才の国タイ (中公新書)

 

えと、まてよ? 「明治維新は市民革命です」なんてことを習ったような気もするが、もしかすると明治維新もクーデターか? 歴史を勉強したことがないので、ちょっとこれはおいておこう。 

明治維新はよくわからないが、辞書的には明確に区別できるところであるようだ。『日本国語大辞典』の説明的な語釈も見ておく。

クーデター
〔名〕
({フランス}coup d’État )《クーデタ》
非合法の武力的奇襲によって政権を奪取すること。支配階級内部の権力移動であって、体制の変革をめざす革命とは区別される。一七九九年のナポレオン一世、一八五一年のナポレオン三世、一九二二年のムッソリーニなどの事例が有名。

実は、本稿を書くまで「クーデター」と「革命」の区別について、ちゃんと意識したことがなかった。勉強になったなあ。ただ、『三省堂国語辞典』は、あまり「クーデター」に興味はないようだ。

クーデター
(名)
〔フ coup d’État〕
武力などの手段によって政治の権力をうばうこと。

権力を奪うのが、支配階級なのかどうなのかについての言及はない。『新明解』や『岩波国語辞典』と比べても、この項については不親切さが際立つ。珍しいことだと思う。

ちなみに、『ねじの回転』(恩田陸)は二・二六事件を扱った面白い小説だ。

ねじの回転―February moment (上) (集英社文庫)

ねじの回転―February moment (上) (集英社文庫)