気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「春雷」を「春に鳴る雷」とだけ説明する辞書は手抜きだと思う

「なるほどそういうことか!」がわかる(はずの)『三省堂国語辞典』で「春雷」を見てみる。

これ、「春雷」の意味を求めて辞書を引く人の役には立たないよなあ。まあ、電子辞書で「読み方」を知りたい人の役に立つくらいがせいぜいか。

なぜ「雷」に「春」をつけた言葉が広まっているのか。

もしかすると「夏雷」や「秋雷」、あるいは「冬雷」なんて言葉もあるのかどうか。「春雷」はそもそも珍しいのか、それとも一般的なものなのか。そうした説明も全くなしに「春の雷です」と言われても困る。

しかし、こんな役立たずをしているのは『三省堂国語辞典』だけじゃない。たとえば『広辞苑』。

しゅんらい【春雷】
春になる雷。寒冷前線に伴う界雷の一種。

夏雷は「界雷」でないのかどうか。秋はどうですか、冬はどうですか。教えてください、とついさだまさしになる。

少なくともこの項目については『三省堂国語辞典』のライバルである『新明解』の圧勝だ。

しゅんらい【春雷】
(冬の終わりを告げる)春先のかみなり。寒冷前線により起こる。

春雷というのは、季節の変わり目に「しばしば」目にする(耳にする)雷なのだ。「春に鳴る」のではなく、「春の訪れを告げる」ものなのだ。せめてそれくらい説明しろよなあ>春の雷派の辞書たち。

『平成ニッポン生活便利帳』(現代用語の基礎知識2008年版付録)の記述がわかりやすいか。

春雷(しゅんらい)
春によく見られる雷。春の季語。特に立春を過ぎてから初めて鳴る雷を初雷(はつらい)という。また、二十四節気啓蟄新暦3月5日頃)の頃によく鳴ることから、春を知らせ、虫たちを目覚めさせると考えられ、「虫出しの雷」とも呼ばれた。時折雹(ひょう)を降らせることがあるが、積乱雲による夏の雷のような激しさはない。

手抜き国語辞典のせいで、春の雷を気取って「春雷だねえ」などと言っていた人はいたたまれなくなるね。 

春雷

春雷