『三省堂国語辞典』の第四版をめくっていると「親分」が目についた。
おやぶん【親分】
(名)
(1)かりの親。
(2)親として、すべてをまかせる人。かしら。
ははあ、なるほど。第七版ではずいぶん語釈が変わっている。
おやぶん【親分】
(名)
人の上に立ち、親のように何かとめんどうを見る人。やくざなどのかしら。親玉。
そう。今じゃ「かりの親」のような意味ではあまり使わないように思うな。但し『広辞苑』も『大辞泉』も、この「親」の意味を載せてはいる。
ユニークなのは(予想通りでつまらないかもしれないけれど)『新明解』。
おやぶん【親分】
部下の生殺与奪の権を握る、グループ・閥などの長。ボス。
現代の使われ方に最も根ざした定義かもしれない。
ちょっと腰砕けにさせてくれるのが『現代用語の基礎知識』か。平成五年大衆語部門の「日本新語・流行語大賞」が「親分」だったのだそうだ。
大衆語部門・金賞
受賞者:大沢啓二(日本ハム・ファイターズ監督)
現代では失われてしまった「親分」という言葉を、見事に復活させたのが大沢である。生来のおおらかで明るく豪放な性格、あけっぴろげなべらんめえ口 調は、選手を完全に掌握し、豪快なチーム作りと戦いぶりで観客も魅了した。だれが言うともなく「親分」と呼ばれるようになる。現代人の求める“理想像”と して注目を集めた。
失われてしまっていたかなあ。
なお、『現代国語例解辞典』には「親分」「親方」「親玉」の使い分けが整理されていた。