昔の『三省堂国語辞典』(第四版)を眺めていた。そこで「回路」に出会った。
回路
(名)
〔理〕安全器を通って流れる、電気の道。
よくわからんなあ。「安全器」の仕組みもよくわからないが、回路には必須のものなんだろうか。
というわけで不評だったんだろう。第七版では書き換えられている。
よくわからない「安全器」も第七版から引いておこう。
あんぜんき【安全器】
(名)〔理〕みとめられた強さ以上の電流が流れると、回路が切れるようにした、一種のスイッチ。電気による火事や事故をふせぐために使う。ブレーカー。
なるほど、ブレーカーのことか。それであれば回路の必需品ではないな。第四版はなぜだか書きすぎてしまったのかな。
ところで『岩波国語辞典』の「回路」はなかなか潔い感じ。
かいろ【回路】
電流の通路。
以上。
そりゃそうかもしれんわなと納得しかけるも、異を唱える辞書もあった。たとえば『ベネッセ表現読解国語辞典』だ。
かいろ【回路】
(名)
〔物理〕電流・気体・液体・磁気などが流れる道筋。特に、電気回路。
こりゃあ真っ向勝負だ。しかし浅学にして「気体」とか「磁気」などについて「回路」の用語を使ったことはないような気がするけれどどうなんだろう。
そう思って『明鏡』などを見ると「流体・エネルギー・電流などが巡回する通路」としているので、いろいろなものについて「回路」の語を使うのだろう。『新明解』も『明鏡』に似ている(余談ながら『新明解』は現在の第七版の「回路」よりも、第三版の方がちょっと面白い)。
長くなったけれど『広辞苑』も格好良いので引いておきたい。
かいろ【回路】
1) 電流の通路。電流が流れるために、導体を終端のないように接続したもの。サーキット。
2) 〔生〕生体の物質代謝経路のうち循環的な部分の呼称。サイクル。
過不足ない感じだし、「終端のない」とか「循環的な部分」なんて表現も素敵だな。
国語辞典が面白いのは知ってるけれど、「回路」でもこんなに楽しませてもらえるとは思わなかった。