気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

辞書に生き残る「大手合」

岩波国語辞典』の「手合い」を見た。

てあい【手合(い)】
(1)(やや軽んじた言い方で)連中。仲間。転じて、種類。
(2)勝負をすること。手あわせ。「大――」。

ああ、「勝負」の意味の「手合い」の例として「大手合い」を用いているな。そもそも「大手合い」という制度がなくなっているんだけれど。

「大手合い」が存在しない今、『岩波国語辞典』の「大――」の例示は不適切だ。

 さすがに「大手合い」を記す辞書は減りつつあるはずだ、と思いつつ『大辞泉』のオンライン版(随時アップデートされている)をみて驚いた。「大手合い」が見出しにあったのだ。

大辞泉』は、ぼくの感覚でいうと「新しい語もなんでも載せる」感じの辞書。もうちょっと良い言葉でいえば「更新に積極的」な辞書だ。しかし「おおてあい」については情報の更新はない。

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おおてあい【大手合(い)】
囲碁で、専門棋士の商談を決める対局。

写真は紙版だけれど、オンライン版も同様。なるほど『日本国語大辞典』にも同じような語釈があるけれど、更新頻度をウリにしているのであろう『大辞泉』(のオンライン版)であれば、情報を新しくして欲しいところではある。

囲碁に興味のない人にはどうせわけのわからない情報かもしれないけれど、一応Wikipediaを引いておこう。

2003年1月20日、日本棋院は大手合制度の廃止を発表。同年4月から

(1)タイトル獲得
(2)一般棋戦の勝ち星数
(3)賞金ランキング
を3本柱とする新昇段制度に移行した。

もう2013年という「大昔」のことだ。

ただし。

「大手合い」なき今、「手合い」を「試合」の意味で用いる例があるのかどうか、それはよくわからないな。少なくともぼくは「試合」の意味で「手合い」を使ったことはない。

大辞泉』としても「大手合い」の例を削除したいものの、そうすると語釈そのものを変えなくちゃならず、それは少々大変だってことなのかもしれない。

怒涛の譜―加藤正夫精局集

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