気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「小上がり」は怖い場所?

最初に『岩波国語辞典』をみてちょっと吹き出した。

こあがり【小上がり】
小料理屋などで、腰掛け席とは別に設けた、奥行きのない畳敷きの客席。

「奥行きがない」部屋ってのはないと思う。ガヴァドンじゃないんだから。

三省堂国語辞典』もみてみた。

こああがり[小上がり]
(名)〔小料理屋などで〕いす席より一段高く設けた、追い込みの座敷

で、電子版には「追い込み」へのリンクがついている。リンクをたどってみる。

おいこみ[追い込み]
(1)追い込むこと
(2)競争や仕事の終わりに近づいて、一気に終えるように力を出すこと。
(3)〔追い込み場〕飲食店などで座席のしきりを作らずに、どんどん人を入れる所

「どんどん人を入れる」ってのがよくわからないなあ。『蟹工船』じゃないんだから。

まあいずれにしても「日常とは違うこわい場所」風な語釈。

他の辞書が「こわい」ので、『広辞苑』は気を使ったのかどうか。

こあがり【小上がり】
小料理屋などで、客が気軽に上がれるよう、簡単な仕切りだけで土間と仕切られた座敷。

「こわくありませんよ。気軽ですよ」と主張しているわけだ。しかし「簡単な仕切りだけで土間と仕切られた」ってのもちと怖い。入り口の脇にもうけられた折檻部屋みたいな感じもするし。

個人的に、いちばんわかりやすいかなと思ったのが『明鏡』だった。

こあがり【小上がり】
〘名〙小料理屋などで、椅子席を設けた土間と衝立なっで仕切った小さな座敷。

これを読めば「土間」が玄関などの土間ではなく、「椅子席」をおいてある(畳を敷いていない)場所のこととわかる。「奥行きがない」わけじゃなくて、「小さな」座敷なんだ(まあ、それは最初からわかってはいるけれど^^)。

「わかりやすいな」と思いつつ『明鏡』を見返してみると、じつは『明鏡』が一番シンプルなのかもしれない。他のものはなんだか考えすぎて不思議な(二次元的で暴力的な?)世界を描いてしまったみたいにみえる。

明鏡国語辞典 第二版

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