気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

音楽用「レコード」関連は、近々大改訂するんだろうな。

ランダムハウス英和大辞典』をめくっていた。であったのは「EP」だ。

曰く、EPとは「1分間45回転のレコード」。

この説明、ぼくたち世代(ぼくはいま50歳だ)にはなんの不思議も、あるいは理解にあたっての困難もない。EPとLPがあったね、ってのがぼくら。もう少し上だと「もとはSPだよな」てなことになる。

しかし、こんな説明が何の役にたたなくなる日も近いんだろうな。「レコード」の意味が通じなくなるし、するとレコードを「回転させる」というのもなんのことかわからないはずだ。

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そんなことを考えながらふと思った。日本語ではEPは「シングル」ないし「ドーナツ盤」といったな。

「ドーナツ盤」という言葉はまだ辞書に残っているだろうか。そう思ってみてみると意外に残っているものだな。

たとえば『新明解』は「ドーナツ」の子項目ではあるが、きちんと定義する。

ドーナツ盤
「EP盤」の異称。〔中心に三八ミリの穴が開いているところから言う〕

でもこれはきっと、わからない人が多いだろうな。メインは「EP盤の異称」だ。いまでは「EP」という言葉もほとんどきかないし、またその元となったSPなんて、すでにぼくの世代でもほとんど実用で使った記憶はない。「三八ミリの穴」ってのもよくわからないだろう。そのサイズが大事なのか、それが「わりと小さい」穴なのか、それとも「結構大きな穴」なのか。

広辞苑』をみる。

ドーナツばん【ドーナツ盤】
直径17.5センチメートル、1分間45回転のレコードの俗称。EPレコード。中心部の穴が大きく、その形状がドーナツに似ているからいう。

ずいぶん詳しくなった気はするな。穴は「大きい」んだそうだ。

ただ「穴が小さい」ものがあったのか、それとこの「ドーナツ盤」の違いは何だったのかなどはまったくわからない。「1分間45回転のレコード」という言い方も微妙だ。「レコード」そのものが消え去りつつある中、回転数だけ示して「そういうレコードなんだよ」と説明しても通じるわけはない。

頑張ってるらしい『広辞苑』も「意味不明」になる日は近そうだな。

ただ『広辞苑』は、ことばが死語になってから収録する辞書である、というような話をどこかできいた。してみれば『広辞苑』が「ドーナツ盤」や「LP」「EP」などの記述を消し去るのはまだ相当に先のことだろう。

次の広辞苑(もちろん他の辞書も)で「ドーナツ盤」がどのように記述されるのか。ちょっと楽しみではある。

総革装 広辞苑 第六版

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