気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

辞書にほとんど載っていない「漸近線」

漸近線」って言葉を知ったのは中学生の頃だったかな(小学生で習うのかもしれないけれど、小学時代に勉強したことはないので知らない)。言葉も素敵だったし、永遠に近づき続けるという「ありかた」も面白そうだった。

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と、いいつつ。「漸近」するのは曲線の方であり、漸近線(中1の反比例ならx軸とy軸)は近づいてこない。なのに、その直線の方を「漸近線」というんだなあ。

おそらくは「漸近していく」線という意味なんだろう。そんなことを考えて、国語辞典に正解を求めてみた。

ところが。意外にも多くの国語辞典は「漸近線」を載せていないようだ。

少なくとも『広辞苑』、『明鏡』にはない。『岩波国語辞典』にもないし『三省堂国語辞典』にもない。なんか面白いこと言ってくれるんじゃないかと思った『新明解』にもない。

ちょっと見てみたところでは『日本国語大辞典』と、『大辞泉』、『現代国語辞典』くらいかな。

とりあえず『日本国語大辞典』の語釈をみてみる。

ぜんきん‐せん 【漸近線】
曲線に次第に近づいて行く直線。限りなく遠くまで続く曲線において、動点が曲線に沿って無限に遠ざかるとき、その点からの距離が限りなく0に近づくような定直線が存在すれば、この定直線をその曲線の漸近線という。

ほら! やっぱり気になる! 漸近線とは自らが「曲線に次第に近づいて行く直線」ものなのかどうか。

大辞泉』の方が、ちょっと理解しやすいかな。

ぜんきん‐せん 【漸近線】
ある曲線が、原点から無限に遠ざかるにつれて、限りなく近づいてはいくが、決して交わらないし、接しもしない直線。

ここでは、近づいていくのはあくまでも曲線の方なのだと明記されている。

ついでなので『現代国語辞典』もみておく。

ゼンキンセン【漸近線】
双曲線などのように、原点から無限に遠ざかっていく曲線が同時にある直線に無限に近づいていくとき、その直線。

わかりやすい、と思う(近づくのは曲線の方だとも書いてあるし)。ただ「原点」や「同時」の使い方が曖昧で混乱してしまうこともあるだろうなあ。

結局「漸近」の意味(「しだいに近づいてくる」ではなく、「しだいに近づいていく」という意味理解で良いのかどうか)はよくわからない。

でも「漸近線」が「たいていの辞書には載っていない」というのは、面白い発見だった。