気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「がんぐう」ってなんだ? にまつわる話など

「岩偶」と書く。字をみれば「ああ、あれのことじゃん」とわかる人が多いんだろう。ぼくは「岩偶」という文字を見ても、「いわぐう」などと読んでしまった馬鹿者だ。

この「岩偶」に出会ったのは『日本の土偶』なる本を読んでいたときのこと。

日本の土偶 (講談社学術文庫)

日本の土偶 (講談社学術文庫)

 

出典がわかれば意味はもちろんわかる。『日本国語大辞典』に立項されていたので、それを引いておこう。

がん‐ぐう 【岩偶】
土偶の形を石でつくった縄文時代の遺物。石偶。石製人形。

これをみてぼくは、(愚かにも)「偶って人のことなのかよ!」なんて、少しかしこくなったような勘違いをして盛り上がってしまった。

恥ずかしい。

土偶」「岩偶」とくれば、「木偶」を連想しなきゃだめじゃないか。「もくぐう」と読む「木偶」を知らなくても、「木偶の坊」は思い浮かべなくちゃだめじゃん(下は『日本国語大辞典』)。

でく‐の‐ぼう[‥バウ] 【木偶坊】
(1)人形。操りの人形。でく。くぐつ。でくるぼ。でくるぼう。
(2)役に立たない者。役立たずの者をののしっていう語。でく。

ちなみに「もくぐう」と読む「木偶」はこんな感じ。

もく‐ぐう 【木偶】
中国古代の副葬品の一つ。春秋末から戦国・漢・遼・宋代にわたる墳墓に多くみられ、死後の生活にそなえてつくられたものと考えられている。木製の俑(よう=人形)で、土製の土偶に対していう。転じて、木の人形一般のこと。でく。木偶人(もくぐうじん・もくぐうにん・ぼくぐうじん)。ぼくぐう。

「偶」というのが、「人間」とか「人形」とかを示すのは、あまりに当たり前のことであったのだなあ。

でもなんでなんだっけ?

国語辞典ではよくわからなかったので、漢和辞典をひいてみたよ。

まじか。てか「禺」ってのは大頭の猿(一節には虫、動物)を示したものなのか! それの人版が「偶」であり、かつそのイキモノと人を並べたりするから「偶数」の「偶」的な意味が出てきているなんて。

「偶」の字が、「偶数」に用いられていたり、「偶然」にも用いられていたり、「配偶者」の「偶」だったりすることについては40年前から不思議に思っていたんだよな。ようやく意味がわかったよ(なんとなくだけど)。

しかしなんというか。

「わからないことがあれば辞書をひけ」というのはよく言われることだけど、「まあいいか」と思えば40年でも無知でいられる、木偶の坊な自分を認識いたしました。

P.S.

上の漢和辞典の「禺」。前にみたやもりの赤ちゃんにそっくりだなあ。


ヤモリの赤ちゃん

ハニワの土偶 (炭化)(高さ11.7cm)

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はじめての土偶

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にっぽん全国土偶手帖

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