気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

岩波国語辞典の「水菓子」事件

『岩波国語辞典』第七版の「水菓子」を見て違和感を感じた。なんだかやけに「我が強い」感じがしてしまうのだ。

曰く「昭和初年までは日常語としてこの語が『くだもの』より普通だった。新たに和菓子業界で、干菓子などに対し水ようかんの類を言い始めた」。

意訳すれば「水菓子ってのは果物にきまってる。それをねじ曲げて使い始めたやつらがいるんだよ」と見える(見えない?)。

あるいは『岩波国語辞典』は、むかしから「水菓子」にこだわりをもっていたのかどうか。なぜか第六版が手元に見当たらないので、第四版をみてみる。

みずがし【水菓子】
くだもの。

以上。他の辞書同様にとてもシンプルな定義になっている。では、なぜ第七版では「くどい」ようでもある定義になったのか。

全くの想像だが、誰かがケチをつけたんじゃないのか。「岩波国語辞典では水菓子を果物といってるけど、老舗の和菓子屋では水ようかんのことをそう呼んでるぞ。たしかに昔は果物をさしたのかもしれないけど、老舗和菓子屋の使い方にも一理あるんじゃないのか。もしかして岩波国語辞典は不勉強で新しい使い方を知らないんじゃないのか?!」。

プライドの高そうな『岩波国語辞典』はこれで怒った。「俺達がしらねえんじゃねえよ。ものを知らないやつらが間違って使い始めただけだよ!」。

そんな流れ(事件)があって第七版の記述になったんじゃないかな。きっとそうだ。

ちなみに。同じような言葉の変遷をみた『三省堂国語辞典』は、まったく異なる進化を遂げた。

第六版では「水菓子」を「くだもの」とのみ定義する。それが第七版では次のようになる。

(1) 〔古風〕くだもの。
(2) 〔俗〕水ようかん・くずもちなど。

「使い始めが誤用だったかどうかなんて知らないけどさ。今は和菓子界で広く使われているんだから、辞書に載せておくのが親切としたもんだろう」。

両辞書のスタンスの違いが見えるようで、ちょっとおもしろい。

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