『新明解』の「咀嚼」って、けっこうきてる。もったいぶるのもなんだから、いきなり『新明解』の語釈を引いておく。
そしゃく【咀嚼】
食べ物をかみ砕き、やがて自分の血とし肉とすること。〔人の言った事や他人の書いた文章の意味をよく考えて、自分なりに理解する意にも用いられる〕
「やがて自分の血とし肉とすること」ってのが、ちょっとすごい。
栄養のこととかよくわからないんだけど、カロリーのない食品とかって、血肉にできないから「咀嚼」することもできないってことなのかな…。
『新明解』が普通に感じる人もいるかもしれないから、他のもみておく。
たとえば『広辞苑』。
そしゃく【咀嚼】
(1)かみくだくこと。かみくだいて味わうこと。
(2)物事や文章などの意味をよく考えて味わうこと。
(2)の意味で「味わうこと」と記しているのは「余計」な気もするけれど、まあ(1)の意味では「血肉とする」のは関係なく、「かみくだく」ことがすなわち咀嚼であるとしている。
『三省堂国語辞典』もみる。
そしゃく【咀嚼】
(1)(食べ物を)かんで、こまかにすること。
(2)思想や文章などを十分に理解して、自分のものにすること。
これも(2)にひっかかりを感じないこともないけれど、食べ物については、こまかく噛み砕けばすなわち咀嚼であるとしている。
『日本国語大辞典』はどうだ。
そしゃく 【咀嚼】
(1)食物をかみくだくこと。また、かみくだいて味わうこと。
(2)(転じて)文章や事柄の意味などをよく考えて十分に理解し味わうこと。
やはり「血肉にする」とは言っていない。
ぼくは『新明解』の「やりすぎ」と評価するな。ただし。2番目の意味の方で、多くの辞書が「味わう」とか「自分のものにする」なんて言っているのも言い過ぎな感じ。
「文章の内容を咀嚼する」ってのは、きちんと理解することであって、味わったり、自分のものにしたりする必要はないように思う。『新明解』は、この2番目の意味に引きずられて「血肉にする」なんて言葉を加えたんじゃないのかな。
ところで、何かのテレビで言ってたけど、咀嚼動画ってけっこう人気があるそうですね…。わからない(咀嚼できない)世界だなあ(^^)。