『新明解』をめくっていて、「異腹」という言葉に出会った。
いふく【異腹】
「腹違い」の古風な表現。
む? 「異腹」が古風なら「腹違い」は現代風なの?
てか、「腹違い」って今でも使う表現なんだろうか。「腹違い」をみてみた。
まずは「異腹」を発見した『新明解』だな。
はらちがい【腹違い】
父が同じで、母が異なる関係にあること。
こちらについては言い換え表現の記述もなく、一般的な言葉であるような定義だ。すなわち、今もふつうに用いられる表現であることを示しているのだろう。
どうなんだろう。ぼくは腹違いの兄弟に面と向かって「ああ、きみたちは腹違いなんだね」と言いにくい感じがするんだけど。それはぼくの心に差別意識があるせいなのか。
『広辞苑』も、やはり「腹違い」は普通だよ的な語釈だなあ。
はらちがい【腹違い】
兄弟姉妹の、父は同じで母が違うこと。はらがわり。異腹。
気づいてみれば、母は同じだけど父が違う場合を示す言葉への参照もないな(ぼくは下品に感じるけど「種違い」というんじゃなかったっけ)。ふつうはこういう内容については関連語へのリンクがあってもよさそうなのに。
『日本国語大辞典』をみても、「腹違い」の穏便な(?)表現は記されず、また反対語へのリンクもない。
いろいろと気になりつつ『明鏡』もみてみた。
はらちがい【腹違い】
兄弟姉妹で、父親が同じで母親が異なること。腹変わり。異腹。↔種違い
おおっ! 反対語へのリンクがあったぞ。やはり「種違い」というみたいだな。しかし「腹違い」はやはり今でも「腹違い」と表現するしかないのか?
はらちがい【腹違い】
〔俗〕(きょうだいのあいだで)父が同じで、母が違うこと。異腹。異母。
「俗」とあるのがちょっといいね。やはり「普通に用いて良い語」ではない気がする。さらに言い換えの言葉もちゃんと書いてある。うっかり忘れていたけれど「異母(兄弟)」という言葉があったじゃないか。これで反対語へのリンクもあれば褒め称えるのになあ。
辞書的に「腹違い」への「忖度」がある感じがするのは、代理母とか、いろいろな技術が生じているからなのかどうか。
ちょっと生煮えな解説が気持ち悪い「腹違い」や「異腹」ではある。