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フォーク・ソング

いろんな思い込みで、吉田拓郎は聞かず、関連の情報も入れないように気をつけていた。でも昨日、初めて吉田拓郎を集中してきいてみた。

 天才じゃん^^。

フォークに興味を持ち始めた頃に吉田拓郎を知ってしまっていたら、気持ち悪いかぶれかたをしたかもしれない。危なかった。

そんな話はともかく。「フォーク・ソング」。昔から国語辞典に載る「フォーク・ソング」ってのは違うよね〜と考えていた。すでに「フォーク・ソング」ってのが消え去ったのかもしれないけれど、国語辞典は「フォーク・ソング」を記録として残しているんだろうか?

日本国語大辞典』から見てみたけれど、「相変わらずだめじゃん」な感じ。

フォーク‐ソング
({アメリカ}folk song )
(1)アメリカに発生した民謡風の歌曲。ギターなどの弾きがたりで、素朴な情感や民衆の感情を歌うものが多い。フォーク。
(2)一般に、民謡。土着的な民間歌曲。

これはつまり、日本にあった「フォーク・ソング・ブーム」 を完璧に無視した語釈だよなあ。

「ぼくは昔フォークにかぶれてね」なんてジジイと話した若者が『日本国語大辞典』を引いたとすると、二人の間に「理解」が生まれることは永遠になさそうだ。

三省堂国語辞典』はどうだ?

フォーク・ソング
(1)〔外国の〕民謡。
(2)〔アメリカで生まれた〕そぼくなポピュラーソング。ギターの弾き語りなどをして、民衆の感情や主張を歌ったもの。

ふむ。日本フォークの一部を表現しているかもしれないな。でもこれで表現している「フォーク」は「吉田拓郎以前」だな。「モーリス持てばスーパースターも夢じゃない」時代のフォークは定義の外だ。

たまに「真理」を突いてくる『新明解』も、「日本のフォーク」に目を配っているようでいて、ちょっと何を言ってるのかわからない語釈だ。

フォーク・ソング
第二次世界大戦後、日本の若い人や働く人たちに好んで歌われている、外国民謡や仕事の歌など。

フォークの流行を「第二次世界大戦」として良いものかどうか。また「外国民謡や仕事の歌」ってなんだよって感じ。誰かがこんな定義を口に出せば「ちょっと頭が不自由なんじゃない?」なんて思ってしまいそうだ。

いろいろ見て回ったんだけど。唯一(ぼくのみた範囲で)『広辞苑』が、なかなか良い定義をしていると思うよ。まず「第六版」。

フォーク・ソング
(1)民謡
(2)アメリカ起源の民謡調歌謡。1960〜70年代に若者の間で流行。ギターの弾き語りなどにより素朴な旋律で民衆の情感、社会批判などを歌うものが多い。

時代も正しいね。『三省堂国語辞典』にちょっと似ているけれど、違うところがすべて『広辞苑』の勝利って感じ。

「七版」では多少語釈が変わっている。

フォーク・ソング
(1)民謡
(2)アメリカ起源の民謡調歌謡。1960年代以降に若者の間で流行して世界に広まった。ギターの弾き語りが典型的なスタイル。

ぼくは「六版」の方が好きだけど、「七版」にする際、「ニューミュージックとしてのフォーク」を意識したんだろうな。また、日本で流行したいわゆる「四畳半フォーク」なんかを意識すれば「民衆の情感、社会批判」なんて言葉を残しにくいものな。

ま、どちらにしても。「フォーク・ソング」の語釈は広辞苑』が一番頑張ってるんじゃないかと思う。


やさしい悪魔:吉田拓郎


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